ホの字
いや、待て、この国に関西地方があるなんて聞いて無い。多分、これは老婆とクラウスがイセコスの方言で話している言葉をオブザーバーが訳して俺には関西弁に聞こえるのだろう。
でも、何というか、親しみ感がすげぇ。
「ピリスちゃんがコス市の行政官に就任したと聞いてシャギーリエレメントエンジニア協同組合の組合長として挨拶に行くのは当然やないか?」
シャギーリエレメントエンジニア協同組合? EEにも業界団体があるのか。それが、このお婆さんがトップというわけか。
「そらそうかもしれんけど、何でここにおんねんで!」
「……クラ坊が何を考えとるかなんて、ジブンがオムツの時からお見通しやで。さっさとその物騒な物仕舞っとき」
老婆の言葉に促されるように、苦虫を噛み潰したかのような顔で、しぶしぶ銃を降ろす、
このキャラクターで関西弁を喋るおばあちゃん子か。
「――きさまぁ! なんだその含み笑いは!!」
「クラ坊!」
「ば、ばぁちゃん、だってコイツが」
俺は一体何を見せられているんだ?
「お前さんが杉山武光だね? ……なるほど、ピリスちゃんがホの字になるだけあるって男なのかもねぇ」
「ああ、はい、杉山武光です。いやぁ、ホの字かは分かりませんが、ピリスにはいつも世話を掛けっぱなしみたいで」
クラウスの憎々し気な視線を無視する。
「ウチのクラ坊がすまんねぇ。本当は優しい子なんだがピリスちゃんの事になるといつも空回りするところがあってねぇ。さっきもピリスちゃんに挨拶したら、ここに行くように言われて案の定だ」
「アイスクラ―さまは、人が良すぎるだけや。コイツは何ぞを隠していて、今にも白状しそうやったのに、ばあちゃんが来るから」
「……分かっとらんねぇ。人がええのはピリスちゃんやのうてクラ坊やろ……はぁ、すまんねぇ、ちょいと座らせておくれ」
老婆は疲れ切ったかのような顔で丸椅子に腰かけた。
脚腰の痛みというより、足腰に力が入らないように見えるな。
「失礼ですが、あの、身体が冷える感じがありませんか? それと、トイレが近いとか?」
俺の言葉に老婆は驚いた顔をした。
「キサマ……祖母に対して、あのワケの分からん奇術を披露でもするつもりか!?」
その奇術でお前の大好きなアイスクラ―さまは助かったんだけどな。
「こりゃ、驚いたねぇ。話には聞いておったが、ちょいと私を見ただけで辛いところを当ててしまうとはねぇ。まだオブザーバーは使っておらんのだろ?」
「ええ、そうです。ケイラス病ではなさそですが、足腰が弱っているようなので職業柄ついつい気になってしまって」
見立てとしては『腎虚』だろう。オブザーバーを使えば、黒の川が勢いを無くしているといったところか。高齢者に多く、簡単に言えばエネルギー不足、若いアカネと逆の状態と言える。




