え、キミも関西弁なの?
廊下に出るとクラウスが壁に寄りかかっていた。
「……こっちだ、ついてこい」
不愛想な表情で歩き出す。
明らかに不本意そうなオーラを背中から発しているのを見ていると、サラの件がコイツにバレたらヤバい事になるだろうな。
ガラス張りのエレベーターのドアが開きクラウスに続いて乗り込む。
こういう技術も動力源はエレメントなのだろうか。
ガラスの向こうに見える眼下の光景は、コス市庁周辺の近代化と比べて外周の居住区は牧歌的な街並みが広がっている。地球のような産業革命を経た発展に比べると、シャギーリはエレメントの力による急激な変化が起きたようなものだろうか。
10Fと書かれた階に停まり、クラウスの後に続く。
人気のない廊下を通り、クラウスは扉の前に立つと手をかざす。
へぇ、指紋認証みたいなのもあるのか……歪な発展をしているように感じるな。
扉が開き中に入ると、白壁のラボのような部屋だった。規則的に並べられた研究用デスクには、顕微鏡やら瓶などが置かれ、デスクによっては工作機械のようなものもある。
エレメント研究室という感じか。
クラウスはデスクに置かれている頑丈そうなケースを開く。中には複数のエレメントコアがあり、黄色のエレメントコアに手を伸ばし、一個分が収まりそうなケースに収納すると無言で俺に差し出してきた。
「はいはい、ありがたく頂戴……どういうつもりだ?」
左手でケースを差し出しながら右手では銀色の銃をこちらに向けてきた。
「どういうつもり? ……それはこちらのセリフだ。テロリストを呼び寄せ、隣国の大統領から親書を送られる。そんな偶然が重なると思うか?」
「いやー、俺も怪しいと思うけどさ」
「とぼけても無駄だ! アイスクラ―さまは寛大な御方だが、私はそうじゃない。キサマのせいでこれ以上、アイスクラ―さまの立場を危うくするわけにはいかない!」
ピリスの立場が危うくなる?
「……ピリスに迷惑かけてるのか?」
俺の言葉にイラついたのか、クラウスの顔がみるみる赤くなってきた。
「無自覚な馬鹿ほど腹立たしいものはない! ……キサマの身元を保証するためにアイスクラ―さまは本部での出世コースを外れ、コス市の地方行政官となりボッカイの街を監視するような屈辱的な任務に就かれているのだ! なのに、キサマはそれにも気付かず、フリーライト合衆国の揉め事をこの市に呼び込んできたんだぞ!」
無自覚なつもりは無かったが、ピリスの処遇を具体的に言われてしまうと、申し訳ない気持ちにもなる。
いつも飄々として何を考えているか分からない所もあるが、ピリスは俺たちの為に色んな事を犠牲にしてくれているんだ。
……だったら、サラの事を黙ったままでいいのだろうか?
「……フン、少しでも反省しているのなら、キサマが知っている事を言え!」
クラウスは引き金に手をかけ、脅しで終わらないような血走った眼でこちらを凝視している。
「そないなことをせぇとピリスちゃんが言うてたか? クラ坊」
え、関西弁?
後ろを振り向くと白衣を纏った銀髪の老婆が杖をついて立っていた。
「ば、ばあちゃん! 何でここにおんねんで!?」
え、キミも関西弁なの?




