暴虐のカヤ
声の方に顔を向けると、金色のツインテールの美少女が見えた。
しかし、ただの美少女ではなく頭には短い丸まった角が見える。
マントを羽織ってエリート女子高のようなハリーオッターの制服のような服を着て角を生やした、いかにも魔法な姿の美少女。
あんなカワイイ娘も亜人なのか。
ライオン男たちも声の方へ振り返るが、美少女を見た瞬間「ひぃ」と小声でつぶやき、ブルブル震えだした。
「……おい、クソ無資格者が、下等な無資格魔術を使ったわね!?」
美少女の顔に似合わぬ暴言のあと、ピンっと空気が一変した。
急激に周囲の酸素濃度が減ったかのような息苦しさ。
俺よりも苦しそうに亜人たちは脂汗を垂らしながら地面に膝を着いた。
「よく聞きなさい、無資格ども。貴様らに残された選択肢は二つ。ボッカイ魔法協会に入会して生涯研修を受けて、まともな魔術使いになるか。もう一つは」
美少女の姿形から想像できないくらい禍々しい空気を放ち血走る眼を向けて、
「貴様らの皮がアタシのマントになるかよ」
呪うかのような声でつぶやいた。
美少女はただ、そこにいて呟いただけなのに、三人の亜人は恐怖なのか魔法なのか、口から泡を吹きだして白目を剥いて倒れた。
「ッチ、この程度の威圧で気絶するワケ? 忌々しい無資格者どもめ」
吐き捨てるかのように口走り、汚物を見るかのように亜人たちを見下している。
助けられたのかもしれないが、私は魔王だと言われても信じてしまうであろう。
もしかして魔王軍ルート?
美少女はこちらに視線を向けると先程とはまるっきり違う、慈愛を湛えた瞳でこちらに駆け寄ってくる。あ、かがんでミニスカがぁぁ。
「あなた、大丈夫? ひどい顔、火傷してるわね。その恰好からすると異世界の人ね」
右手を俺の額にかざすと暖かな空気が身体を包むような感触。すると、身体の痛みや熱感が嘘のように退いていった。
「これで、大丈夫よ。災難だったね、クソ無資格者に絡まれてしまうなんて」
ふわりと石鹸のいい匂いがする。
パッチリと開かれた瞳は蒼く。高過ぎず低過ぎない鼻、薄紅色の柔らかそうな唇と、まるで外国映画の完璧なお姫様のような顔立ちをした究極の美少女が目の前にいる。
外国産ゲームの世界観に国産ゲームのヒロインというわけか。
だが、さっきからクソだカスだマントにしてやるぞ、と物騒な事ばかり言っていたので、魔王軍ルートの線はまだ消えてない。
「それにしても、ずいぶんお金を持っているのね? どこかに行くはずだった?」
「あ、ああ、そうです。俺はボッカイ魔法協会ってところに」
「え! もしかして入会希望?」
答えに被せるように食い気味に近づいてくる。
うわー、まつ毛長いなぁ。
「にゅ、入会かはよく分かりませんが、アカネさんという方にお会いしたくて」
「へぇ、アカネの知り合いなんだ! それは嬉しいな」
親しみを込めた笑顔を向けられて、ドキッとする。
この年でも胸キュンしてしまうとは!
とは言え、魔王ではなく魔法協会の美少女で魔法少女ルートのようで安心した。
「いやー、良かった、どうなることかと思いましたが助かりました。ピリスにハメられたかと思いましたが」
「……ピリス? ピリス、ってピリス・アイスクラー? それにその腕輪……」
「ええ、エレメントマスターのピリスです。彼女にボッカイ魔法協会のアカネさんを訪ねてみたらと言われて、この腕輪もっぎぃ!」
――刹那、全身が凍り付くような痛みが駆け巡った。
感覚の通り、首から下が氷に覆われている。
「……はぁ、このアタシが、クソ無資格野郎に回復魔法を使ってしまうとはね。アンタやるわね」
ニヤリと笑う口から鋭い犬歯が見えた。
痛みと寒さで唇が震えて言葉がでない。
「エレメントギアを装備してるってことは、アンタ『EE』ね」
凍り付いた左腕のオブザーバーに美少女は顔を近づけながら、凍り付いたような表情をしている。
何を言っているかわからない。
しかし、彼女の何も映さない瞳を見れば分かる、俺を殺す気だ。
「あっちもこっちも無資格、無資格。どうして、虫のように増え続けていくのかしら?そろそろ寛容的なアタシも我慢の限界かも」
首の下の氷がピシピシ音を立て上がってくる。このままじゃ、口と鼻が覆われて息が出来なくなる。
「アンタ達には生きる資格も無いわ」
世界が氷によって閉ざされていく中、最後の記憶は彼女のステータスだった。
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名前:カヤ・シドウ 年齢:17歳 性別:女 ランク:S
職業:魔法使い
HP:B
MP:S
魔力:S
魔防:A
筋力:C
体力:C
速度:B
黄龍:A
B:87 W:57 H:83
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