5 パーシル
依頼の報告を終えたパーシルは、火の車亭でヴェインと食事を取ることにした。
今日の夕食はジャガイモのポタージュにベーコンを添えたものと、軟らかいパンだ。
パーシルはスープを使い、スープをすすった。
ヴェインも同様にスプーンでスープをすくい、なぜか音をたてないように飲みずらそうなやり方でスープを飲んでいた。
「そう言えば、今朝ジュピテルがきていたけど、何を話したんだ?」
「ムーンレイルで仕事をしないかって、あとカッシェルさんがらみの近況とかいろいろ」
「そうか。……行くのか?」
「まさか、あそこはまだアイフィリア教団が結構うろうろしているらしいし、さすがにない」
カラカラと笑うヴェインにパーシルは少しほっとした。
お互いに今日やったことを話し、食事もほぼ食べ終わったので、二人は家に帰ることにした。
店を出る途中、パーシルは床に落ちた小さな紫色の花を見つけた。
幾重にも小さな花が咲くそれはパーシルの苦い記憶を呼び起こした。
『結婚しよう』
『決闘ではなくて?』
妻のマリーシャにプロポーズした時の記憶だ。
その時パーシルはこの花を選び、マリーシャに笑われたのだ。
「この花は……ハナダイコンか?」
「知っているの?」
「ああ、確か意味があって、競争とか対決とかそういう時に送る花だ」
「師匠……あんたって人は……」
「どうりでクリスがシアに蹴り飛ばされてたわけか」
パーシルはヴェインと二人で、クリスの幸せを願った。
パーシルもまた、彼がシアを好きだと知っている人の一人だった。
――そういえば花瓶があったけか。
その花をパーシルは拾い上げ、うちに飾ることにした。