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私って魔女だったの?



「ここがメイリスだ」


「ここが…………!」


「まぁ、そんなに大きい街じゃないから街のことも直ぐに覚えられるだろ。とりあえずこのまま真っすぐギルドに行くぞ。俺は帰還の報告もしないといけないし」


「あ、うん!」



いよいよギルドに。


緊張とワクワクと少しの不安。




「ここがギルドだ」


「ここが…………!」




ギルドの扉を開けてキリルが中に入った途端に賑やかな声が聞こえて来た。



「あれ!?キリルじゃないか!遅かったな!」


「何!?キリルが帰って来たって!?」


「えー!キリルおかえり!」


「何してたの?全然帰ってこないから心配したんだよ」


「あん?任務完了の報告は送ってあったぞ」


「それは聞いたけど!報告があったのに全然帰って来ないから、帰り道に何かあったのかと思うじゃない!」




あっという間にキリルの周りに人が集まった。


次々にキリルの帰還を喜ぶ声や心配していたという声がかかる。


私がいたから戻るまでに時間がかかってしまったのだろう。申し訳ないな。


キリルの周りに集まった人は皆笑顔だ。


人に囲まれてるキリルとどうしたら良いのか分からない私。


誰って感じで気にしたように見てくる人はいるけど、私とキリル達の間に急に見えない分厚い壁で隔てられたような疎外感があった。





「こんにちは!はじめましてね?お仕事の依頼かしらぁ?それともお仕事探し?」



所在なく佇んでいるとピンクの髪で可愛い女性がにこやかに声をかけてくれた。


前世の受付嬢みたいな服を着ているし、ギルドの職員なのだろう。



「あ、えっと、仕事探しの方で。初めてでどうしたらいいのか分からないんですけど」


「では、こちらにどうぞぉ」



カウンターに案内されて、カウンター越しにピンクの髪の女性と向き合う。



「それじゃぁまずはこちらを記入してね」


「はい」



渡されたそれは簡単な履歴書のような物だった。


自分の名前やこれまでどんな仕事をして来たか、魔法は使えるのか、戦闘経験はあるのか、得意な戦闘方法は何か、どんな仕事を希望するのか等の設問に記入していく。




「ふむふむぅ。魔法も戦闘経験もなしね」


「ないとだめですか?」


「そんなことないわよ。報酬額は期待できないけど魔法が必要なくて戦闘もしない仕事もあるから大丈夫よぉ。薬屋さんだったのね。もしかして、魔女だったりする?」


「いいえ。魔法は使えないので。あ、そういえば師匠は村人から何故か魔女様って呼ばれていましたけど。でも、師匠も魔法は使えなかったはず……」



村では村人から「魔女様」と呼ばれていた。


ダリアさんが生きてる時は私は「お弟子さん」だったけど、ダリアさんが亡くなると私の事を「魔女様」って呼ぶ様になった。


私はもちろん魔法を使えないし、ダリアさんもキリルが使うような魔法を使っているところは見なかったから、魔法は使えなかったはず。


だから、村人から魔女様と呼ばれているのはダリアさんの白髪交じりでグレイヘアの長い髪やローブのような服を着ている風貌、社交性の無さに加えて薬作りのイメージから来ているだけだと思っていたのだけど。


魔法は使えないと書いたのに魔女と聞くなんて、魔女にはなにか私が思っているのとは違う定義があるのだろうか?


ピンク髪のお姉さんは、私を少しじっと見た後少しだけ首を傾げて「魔女なのかと思ったけど……惜しいわ」と呟いた。


「魔女って、魔法薬と呼ばれる特別な薬を作る人の事だけど、普通の薬屋さんとは違うのよ。扱う材料とか製法とか。師匠から弟子だけにその魔女独自の調合を伝えられるらしいのだけど。魔女の魔法薬を知らないって事は普通の薬屋さんだったのかしらね。一般の人は区別がつかない場合もあるというけれど」



ダリアさんが作る薬しか知らないから、普通の薬と魔女の薬の違いが分からない。そもそも普通の薬と魔女の薬って、普通じゃない薬ってどういうもの?


普通以外の薬があることさえ知らなかった。




「んー……因みにだけど、薬作りの材料に薬草以外を使うことはある?」


「はい」


「それって、爬虫類とか?」


「そうです」


「じゃあやっぱりあなた魔女なんじゃなぁい!」


「え?」


「魔女ならきっと直ぐにランクアップできるわよ。というか、ギルドに登録なんかせず魔女の魔法薬屋をやった方がよっぽど儲かると思うけど?今はこの街に魔女の魔法薬屋がないし。あ!このギルド専属にならない?そうよ!是非なって欲しいわ!職員として働かない?ね?そうしましょう!?」


「え?え?え?」




私って魔女だったの?


今のお姉さんの話からすると、魔女と言っても魔法を使う人の事では無いみたいだけど。


童話に出てくる魔法を使うおばさんが魔女のイメージだったけど、この世界でいう魔女は違うらしい。




そもそもの認識の違いからまず戸惑っているのに、お姉さんがどんどん話すから頭が追いつかない。


軽くパニックになりかけていると、隣の空いていた椅子にドカリとキリルが座って来た。




「あら?キリル。なぁに?ここは登録カウンターよ。あなた久しぶりに来たからって場所が分からなくなったの?」


「はあ?ちげぇよ。何年通ってると思ってんだ。間違えるか」


「じゃあなによ。今こちらのお嬢さんにうちの専属にならないかって交渉していた所なの。邪魔しないでちょうだい」


「専属?何の話だ?」


「キリルに関係ないわ」


「レイニアは俺が連れて来たんだ。俺にも話を聞かせろ」


「あら、そうなの?ほんとぉに?」



お姉さんが信じられないとう表情でキリルを見た後、私に確かめて来た。



「はい。助けてもらった縁で、ここまで連れて来てもらいました。お世話になっていて命の恩人なんです」


「ほらな。俺は……保護者みたいなもんなんだ」


「保護者って!私は子供じゃないって言ったじゃない」


「分かってるよ。言葉の綾だろ、今のは」



キリルに頭をぽんぽんとされて宥められた。


子供扱いしてるじゃないか。



「はいはい。2人が仲良いのは分かったわ。レイニアちゃんは自分では普通の薬屋さんだと思っていたらしいの。でも薬草以外も薬の材料に使うのですって」


「魔女だったんか!?」


「よく分からないけど」


「でね。今この街に魔女はいないし、ギルドに登録するより開業した方が良いと思ったんだけど、ギルドも専属の魔女がいればかなり助かるのよね。みんなにも歓迎されると思うの。一般の人でも魔法薬が欲しければギルドに買いに来れば良いから。今までだって一般の人からは依頼という形で魔法薬を取り寄せて販売していたし。だから、ギルド専属にならないかってレイニアちゃんを勧誘していたところ。職場はギルド内になるから自営より危険も無いし、自営よりもリスクが少なくて条件も良いと思うのよ」


「なるほど。確かに魔女がギルド専属になってくれたら助かるやつは多いし、レイニアが危険な目に遭うリスクは減るのは良いけどな。―――レイニアはどうしたいんだ?」


「うーん……今あなたは魔女なのよって言われたばかりで、何が何だか正直よくわからなくて」



話を聞いていると魔女の作る薬は特別っぽいけど、私の作る薬は主に風邪薬とか胃腸薬とか、傷薬とか日常的に使う物が殆ど。


役立つとしても痛み止めや傷薬くらいだけど、特別な物ではないと思う。


ダリアさんからは誰が使うんだろうって薬の作り方も一通り習ったのは確かだけど、それがここで役に立つとも思えない。


ギルドに登録するより、ギルド専属の薬屋になった方が条件は良いみたいだけど、そうなってから結局普通の薬屋でしたってなったらと思うと二つ返事はできない。



「まぁ、いきなり決めるのは無理よね。レイニアちゃん、良かったら前向きに考えてくれない?」


「分かりました」


「んじゃ、今日は帰るか。行くぞ」


「あ、うん。あの、失礼します」


「はぁい。またお待ちしてまぁす!」




「帰るか。行くぞ」って事はこのままキリルの家に私も行っていいんだろうか?


お金もないしキリルの家に泊めてもらえなかったら1人で野宿しか無いけど。


野宿は避けたいから泊まらせてもらえるのはありがたい。


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