七、猫休憩中
七、猫休憩中
境内内。夜空に星が光る。
神使が二人歩いてくる。猫が反対側から入ってきてすれ違う。
神使BC お疲れさまです
猫 おつかれ
神使B まだお仕事ですか
猫 にゃ。今休憩中。
神使C 我々は一足お先に失礼させていただきます。
猫 また明日にゃ。
神使BC、深々とお辞儀をして猫の元から去る。
神使B しかし、あの人たちはいつ休むんだ?
神使C 休みなんかないだろ。あの人達は、ここから出られないんだ。それが神様ってもんだろ。
神使B いやいやいや、あの人達は毎日が休みみたいなもんじゃねぇか。いっつもちょろちょろしてるし。あの3人は時々どっか行っちまうみたいだし。仕事をしてるようには見えねぇなぁ。
神使C ばっか! 滅多なこと言ってんじゃねぇ! あの方は猫なんだぞ! 怒らせでもしたら食われちまう!
神使BCはゆっくり振り返って猫を見る。話が聞こえていた猫はニヤッと笑う。
神使BC 失礼しましたッ!
神使BCはそそくさとはける。
猫 食わねぇよ。
猫はふてくされてる。
猫 つまんね。
猫、軽やかな足取りで鳥居の上に登り、陣取る。
猫 来る日も来る日も縁切。かと思えば去る日も去る日も縁結び。みーはもう飽きたたぜ……でもそれが仕事にゃら。やるしかにゃいのにゃ。やりたくにゃいけど・やるしかにゃい。そんな時は
猫、ギターを取り出す。(黒子が勢いよく渡す。もしくはアイテムがドロップみたいにライトでおいてあるギターを光らせても良い)
猫 歌うっきゃにゃい。……あ、これ? プロのバンドマンになれなかった信者がいてにゃ。縁切で〝これ〟お焚きあげしようとしててにゃ。もったいにゃいから拝借した。猫はすごいのでにゃんでも出来るんだ。笛とか、弦とか、なんでも。ちにゃみに、得意なのは弦楽器。じゃ、一曲。
Bon Jovi の Someday I'll Be Saturday Nightのサビを上手に歌う。(イントロから2番に飛びラストサビ歌って終わると丁度良いと思う)
多分、ものすごく変な空気になると思うが、歌の力で何とかしてほしい。上手ければ面白い。歌いながら弾けなければ弾けるまで練習しろ。
歌の途中で、鶴が猫の背後に立って聞いているが猫は気づかない。
猫 にゃー
猫、拍手を客席へ求める。
猫 何百年も妖怪やってっから英語もうまくにゃ~。しっかし今日の生霊共はノリがいいにゃ。(ノリが悪かったらキレてよし) 現世と縁切りしてとっとと成仏しろよにゃ。
猫は伸びをしながらも視線を感じて振り返る。
背後を二度見。猫は鶴がニコニコしながら拍手をして見ているのに気が付く。
振り返り、二度目の時にびっくりしてギターを投げ捨てる。ボキっとネックが折れる音。HelloweenのKids’Of The CenturyのPV、ギターソロ前の感じでくるくる飛んでってボキっと折れる。これは黒子が頑張る。
猫 お前!
鶴 こんばんは
猫 聞いた!?
鶴 ええ、まぁ。
猫 い、いつからいたんだ?
鶴 失礼しましたッ…からですかね?
猫 最初から
鶴 笛もそうでしたが、お上手なんですね
猫、羞恥から肩を落とす。が、すぐに気を取り直し、鶴を見る。
猫 (ぼそっと)ひ、ひとみしりしても時間は無駄だからにゃ…(改めて)昔っから音楽は得意にゃんだ。他はからっきしだが……いつまでそこに突っ立ってるんだ? こっち来て座りにゃ。
鶴 いいんですか? 休憩中でしょう?
猫 へーきへーき。こういう時は隣来て座るもんだ……早くしにゃ
鶴、猫の横に正座して座ろうとする
猫 違うにゃ こうするんだ
猫、鳥居の縁に座り足を投げ出してぶらぶらさせる。
鶴、それに習い足をぶらぶらさせる。
猫 にゃ。
猫、満足そうに頷く。
猫 んでにゃに?
鶴 少し話を
猫 にゃんの?
鶴 ここの生活の
猫 へぇ。丑三つ時まで仕事かにゃ。ご苦労にゃこって
鶴 いえ、興味ですよ。私が聞いてみたかった……それだけです
猫 お前変な奴だにゃ。
鶴 ふふ、よく言われます。……この生活はどうですか?楽しいですか?
猫 お前……本当に変な奴だにゃ? 生活に楽しいもつまらないも無いにゃ。暮らしていくって、そういうもんだろ?
鶴 そうでしょうか。みなさんは怨霊として恐れられ崇められている、あの人の従者。あの方に寄せられる願いは負の感情ばかり。怒り、悲しみ、憎しみ……そんなものを毎日毎日受けて、息苦しくなりませんか?
猫 にゃるにゃ。
鶴 もう少し、楽になりたいとは?
猫 思うにゃ。
鶴 それにゃら…(咳)…それなら
猫 でも、みーはこれがいいにゃ。みんながいる。それが一番…ん?
猫、くんくん鼻を鳴らす。鶴を見て怪しむ。
猫 ……お前、ホント、鶴か? 名前だけ?
鶴 ……
猫 お前、何?
猫、鶴の全身を舐めるように見回す
鶴、苦笑。
猫 まぁなんでもいいかにゃー。鶴だろうが白鳥だろうがアヒルだろうが、食ったら全部鳥肉だし。あ、白鳥は食ったことにゃ…い
鶴、猫から一歩離れて座りなおす。
猫、鶴に一歩近づく
鶴、離れる
猫 お前のことなんてくわねーよ。普通に飯食うわ! …おどして悪かったって。
鶴 ……いえ。
猫 あとちゅーる! あれ、うめぇよ⁉ ミネラルってうめんぇのな! ……あ!生霊共(客)がこっち見てるにゃ
鶴 ……ほんとうですね。これまたずいぶんと沢山
猫 手でも振るにゃ
鶴と猫、観客席へ手を振る。ノリが悪かった場合は鶴がキレる。
猫 あいつら全員怨念のこもった生霊やら情念の塊だからすー様に切られてあっちに逝くにゃ
猫、天を指す
鶴 羨ましい最後ですねぇ。
二人、深々と合掌。
間
鶴 聞いてみたかったのですが
猫 にゃ?
鶴 皆さんは何者なのでしょう…神なのですか? それとも神の使い?
猫 (笑いとばして) まさか! そんな! ばっかにゃ~!
鶴 ですが、先ほどなんて、そうあの二人。
阿吽達が出てくる。何か(くだらないことを)している。
鶴 参拝者の方たちにありがたく拝まれていました。
猫 ほー
鶴 見れば他の者達よりもあの方と親し気なご様子。他の方達とは位が違うのでしょうか?
猫 にゃははは! じゃあ。そう思って、あいつら見てみるにゃ。
阿吽、並んで座って手遊びを始める。(なんでもいい。じゃんけん、いっせーのせ、ジェンガ、花札、イライラ棒、トランプ、ハンドスピナーなどで遊んでいる。見たら懐かしいと感じる、流行が去った玩具がよい。最初は正しく遊んでいるが、最終的にルールは全部無視をして争いだす。勝敗は付かないが、迫真の勝負だ。真剣に取り組んで阿吽の心は一機ずつ死ぬ)
阿 いっせーので!いち!
吽 うぇい。なかなかやるな…いっせーので! に!
阿 お前もなかなか…いっせーので、ご!
吽 いっせーので、なな!
阿 いっせーのできゅう!
吽 いっせーのでにじゅう!
阿 いっせーのではち!
吽 ちょーつえぇーぜんっぜん勝負つかねぇ。さすがお前。
阿 そっちこそ! 俺達、やっぱ天才じゃねぇか!
阿吽は肩を叩き合い健闘を称え合う。
猫 あんにゃんが神様でお祀りされてんだったらどうする?
鶴 ………まぁ…
猫 そしたらみーは閻魔様かにゃんかだにゃ。だから俺たちはそんにゃにゃたいしたもんじゃにゃ。
鶴 なんと答えていいやら
猫 でもにゃ、にゃーはにゃんかににゃれるようにゃきがするにゃ
鶴 え?
猫 (少し焦って)にゃににゃにゃ!ぅにゃ⁉
鶴 (笑ってしまう。馬鹿にしたわけではない) ありがとうございます。
猫 …にゃ!
猫、なんだか嬉しそうにしている。