二十一、 縁切り大明神
二十一、 縁切り大明神
崇徳、短冊と筆を手に持ち、入ってくる。
崇徳 山たかみ 岩根の桜 散る時は 天の羽衣 なづるとぞ見る……うーん。新作を作らんとなぁ。
崇徳、茅の輪の前までくる。
崇徳 茅の輪…うーん…ちの…うーん。
うんうん、唸っている崇徳の脇を通り過ぎて神主が入ってくる。茅の輪をぺたぺた触りながら状態を確認している。
崇徳 おお、神主ではないか。
神主 この量だと…ざっと、八十万円。落下するまであと二十万か。
崇徳 んん?
神主 いやぁ、祖ッッ…父殿もよい物を残してくれましたな。閑古鳥の鳴いていた社をここまでに導いたのは祖ッ父殿のお陰。嫌々神社を継いで金に困った祖~~父が、苦肉の策で文字通り編み出したこの茅の輪。噂が噂を呼び、なんだかよくわからないまま有名になって、ご利益が本当にあるのかもわからないけど参拝者が増えて…賽銭もふえて嬉しい限りだけどもさぁ。やっぱり、信者というのは不思議だな。こんなもの、百万円分の形代の重量で切断されるように細工が施された、ただの草で出来た輪じゃないか。ほんとうに、よっくもまぁ、こんなものを信仰するなぁ。一月で百万はボロい商売……はっ!
神主、崇徳の視線を感じて振り返る。目が合った。かに思われたが
神主 勘違いか。誰もいないじゃないか…今日もよろしく頼みますぞー崇徳殿!
滅茶苦茶雑に二拍手一礼して神主は足早に去る。
崇徳、目を丸くしてその様子を見送る。
崇徳 …………まぁ、そんなもんだよな。
崇徳、自嘲気味に笑うが、すぐに短冊に向き直る。
崇徳 茅の輪…ちの…うーむ。季節の、自然の歌を、久方ぶりに詠みたいものだ。
崇徳、鳥居の前へ立つ。
崇徳 ……
崇徳、意を決して鳥居をくぐる。
崇徳 何てこと、ないのう。
崇徳、空を見上げる。鳥が羽ばたく羽音が聞こえる。
崇徳、何かに気が付く。空から白い羽が一枚落ちてくる。
崇徳、木の上にいる鶴を見つける。手を振り、鶴を呼ぼうとする。
鶴 (音声のみ)「カァ」
暗転




