一・明暦の大火
演劇上演を目的として作成した戯曲としての記述です。
縁切大明神
一・明暦の大火
明暦の大火 千六百伍十七年
場所は江戸。城が燃える。
戦。白装束に身を包んだ妖怪達と人間が争う。
侍A いたぞ! あいつらだ!
侍B あいつらが城に火をつけたんだ!
侍C 殺せ! やらねば、こちらがやられるぞ!
人間側が優勢。妖怪達が一方的に蹂躙される。
侍A 城を枯らすアヤカシめ! 成敗してくれる!
妖怪へとどめを指すために振り上げた日本刀が頂点で止まる。
侍、背後から腹部を崇徳院に刺される。
琵琶の音が響き渡る。
烏天狗姿の崇徳院が暗がりから現れる。崇徳院、さらに深く剣を刺す。
侍が絶命したところで死体を無造作に切り捨てる。
妖怪を切りつけていた侍たちが一斉に崇徳院の方を見る。
侍たちが恐れおののく
崇徳院、刀を構え、見栄を切る。
崇徳院 我らが恨み、その身で喰らうが良い!
侍頭 も、者共!掛かれぇ!
蜘蛛の子を散らすように逃げる妖怪達。侍たちが崇徳院へ切りかかる。
崇徳院、侍たちを一撃で切り殺す。
侍B 怨霊がでたぞー!
兵の造園が来る。崇徳を恐れる声。罵声、怒声が飛び交う。
崇徳対、複数の侍の切り合い。崇徳に一撃も与えることなく、侍たちは崇徳に切り殺されていく。
侍頭が一人残される。
侍頭 ヒッ…お助け…
侍頭の切られた頭が飛ぶ。人間、全滅。
崇徳院、刀を天に掲げ叫ぶ。
崇徳 我、日本国の大魔縁となり、皇を取って民とし民を皇となさん!
この経を魔道に回向す!
崇徳、自身の首に刀を当て力強く撫で斬り、自死。崇徳院の体に火が付き、燃える。
崇徳院の不気味な笑い声が響く。
暗転
題 縁切り大明神
ごく短いテーマ、琵琶、笛、太鼓で作られた曲が流れる。