75.VSクインビー/片側では…
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久しぶりの更新になります。
イアンは外の騒がしさが聞こえなくなったと確認の為にそっと窓から覗くとクインビーにトドメを刺したアイゼを労わるように集まっていた。
「最初は何してんだって思ったけどよくクインビーを倒したな」
「そうねぇ、一体どうやったのかしらぁ?」
サントは威力は強くともクインビーにまで届かなかった火系魔法を一発、アイゼは動きはいいが、ただ斬撃を繰り返しただけだった。
特に特別な事をしてはいないのにどうやってクインビーを空から落としたのか、自分達が知らないクインビーの特性でもあるのかとハンダル達のパーティーは興味津々だった。
だが、二人は苦笑いするしか無かった。
この作戦を成功に導いたのは自分達では無く、イアンが考え、それを遂行出来るポチ達がいたおかげだったからだ。
◇◇◇
「この状況を早急打破するには、癪!だが、お前らの力を貸せ」
クインビーとの戦闘中、何か閃いた作戦を遂行するべく、嫌々しそうに頼むイアンの姿に、それでも頼りにされたとアイゼは表情を明るくさせた。
「はい!任せて下さい!」
「でも、イアンさん。あんな上空にいるクインビーにアイゼでも攻撃手段ありませんよ?」
クインビーに届く攻撃を持たない自分達では役不足である今の状況にサントはどうするのか不思議そうに問いかける。
「それは大丈夫だ。サント、お前は強力な火系の魔法をクインビーに向かって打て。届かなくて良い、注意を引きつけろ。アイゼは周りの魔物が邪魔しないように蹴散らして、落ちて来たクインビーにトドメを刺せ。クインビーは俺らが落とす」
そう言うとイアンはテイマーのスキル、『以心伝心』を発動させた。
ポチ達に話すイアンの作戦を聞き、これなら行けると二人はいつでも飛び出せるとイアンの合図を待ったのだ。
一方、イアンの作戦を決行すべくポチ達は動き出した。
「タナカさん(夫婦)!よろしくにゃ!」
「カター」
「カタカタ」
手を振ったタナカさん(夫婦)は離れたところからみー君の開けた穴から地上に出ると、進む為の足を潰されないようにとイアンに頼まれ、見つからないように馬車の守りに入ったのだ。
「にゃ!」
「ワン!」
「コケ」
「コッコ」
「ぎゃう!」
そしてこれからの行動の武運を祈るように拳を突き合わせた。
クインビーの後方に気付かれないように再びみー君が開けた穴からコッコ一号の背中にタマが、二号の背中にはヒドキーが乗り、飛び出した。
コッコ達は本来の姿に戻り、飛ぶスピードを上げてクインビーの飛ぶ上空より更に上まで飛んだ。
「にゃふぅ!いい眺めですにゃ!」
イアンと一緒に外に出たとしても一番の遠出は魚を取りに行く時くらいで、殆ど自宅周辺ばかりしか出かけない。
自宅周辺のように森が広がるが、綺麗に真っ直ぐ二本の道が引かれ、片方には大きな門が見え、わらわらと人がいるのが見える。
反対側は遥遠くに巨大な建物が見えた。あれが目的地かと心が躍る思いだったが、下を見ると虫の魔物がうじゃうじゃ群がっている様子を見て一気に気分が降下した。
「うにゃ…うじゃうじゃ…あんにゃにいると気付かれるにゃぁ…止めた方がいいにゃぁ…」
「コケー!」
「にゃ!?」
イアンからの説明で想像した数より多くいる魔物にタマはビビってしまい、コッコの羽を毟り取る勢いで掴んでしまう。
あまりの痛みに反撃するように首を伸ばしてタマを思いっきり突く。
「コケ、コケコー」
「コケ…コケ、コケコー」
お返しだと言わんばかりに暴れるタマと一号を流石に作戦に支障が出ると隣に飛んでいた二号が止めに入る。
二号に言われては口を噤むしか無くなった一号は、作戦が終わった後で覚えてろよと言わんばかりにタマに目を光らせた。
一瞬でボコボコにされる嫌な未来を想像出来、タマはイアンの後ろに隠れる事を決心した。
しかし、作戦が終わっても周りに人が居てイアンの元に行けない事をタマは忘れていた。
だからこの後、ボコボコにされることはタマはまだ知らない。
「にゃほん。『にゃーにゃー、ご主人、こちら準備オッケーですにゃ』」
『分かった。ポチ、タマ達の準備完了だ。そっちはどうだ』
定位置に着いたタマ達はイアンに伝えるとイアンはポチ達の状況を確認する。
『ワン!』
ポチとみー君は地上に顔を出して誰にも見つからない高い木々が生い茂る位置にいる事を確認するとイアンに準備完了を伝える。
ポチからの準備完了を聞き、一息入れるとイアンただ一言合図を出した。
『作戦開始だ』
イアンの声と共にバンッと馬車からアイゼが飛び出した。
入り口周辺に飛び交う魔物を斬り伏せていく。
みー君は高い木に隠れながら長い体を地上に出し、頭に乗ったポチはギリギリ上空にいるタマ達に届く範囲に辿り着くとスキル『攻撃の遠吠え』を発動した。
「"ウォーーン"」
「!『火球』!!」
それを合図にサントが魔法を繰り出した。巨大な火球は周りの虫の魔物を倒すが、クインビーには届かなかった。
いや、脅威だがクインビーには届かないような威力の魔法を。
サントの魔法によりクインビーの注意が下に向いた。
そしてポチのスキルによって強化されたタマ達はクインビーに向かって一気に急降下する。
「ぎゃーぅ!」
「ビッ!?」
コッコ二号に乗ったヒドキーは火を吐いた。
急に後ろから火の攻撃をされたクインビーは驚いて少しバランスを崩す。
だが、生まれたばかりのヒドキーの攻撃は苦手な火系の攻撃であってもクインビーには脅威では無かった。
狩の邪魔をされたクインビーは反撃しようと羽を羽ばたかせ、吐き続けていた火を一瞬にして掻き消す。
「"猫パンチ"にゃぁ!!」
「ビィッ!?」
ヒドキーに攻撃しようとクインビーが体勢を変えた瞬間、二号より後から急降下した一号の背にいたタマの『猫パンチ』がクインビーに強烈な一撃を与えた。
急降下の勢いもあり、クインビーは地面に叩き付けられた。
コッコ達はさっさと見つからないように直ぐにその場から離れたが、チラリと下を見ると虫の魔物が散り散りになり、アイゼがクインビーにトドメを刺しているところだった。
「成功したにゃ!」
「ぎゃぅ!」
「コケー」
「コケ」
クインビーに攻撃をしたタマとヒドキーは自分達の実力にテンションが上がるが、コッコ達はまさかイアンの作戦がこんなに上手く行くとは思っていなかったと関心しながら、みー君の所まで飛んで行った。
◇◇◇
そしてひと段落した今、アイゼとサントは顔を見合わせてどう話そうかとイアンに伺おうとチラリと後ろに目線をやると、俺を巻き込むなと言わんばかりに睨んでいた。
口パクで早くしろと何度も言って来るイアンに急かせられながら、行きましょうと言いながら駆け足で馬車に戻るのだった。




