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71.牛肉サンド


「…なに、してんだ」


 イアンは心配事が消え、気持ちを持ち直し戻って来るとアイゼとサントが肩を組んで何故かトニーの進路を防いでいたのだ。


 何故こうなったのかと言うと、トニーは休憩の終わりを二人に言い、何故か馬車の後ろに行ってしまったイアンにも伝えに行こうとしたのだ。


 だが、イアンは魔物であるポチとタマに会いに行った。

 そんな所見られたら王都に行くどころでは無く、魔物といるイアンは捕縛連行されてしまう。


 そう考えたアイゼとサントは目配せして先回りし、トニーの進路を塞いだのだ。

 不審に思いながらも二人を避けて進もうとするが、それに合わせて移動する。


 三回同じ事を繰り返し、流石に苛ついたトニーは二人の間を無理矢理割って行こうとするが、肩を組んでそれを阻止する。


「なんで邪魔をする?!」

「いやぁ!こっちに来られるのは、なぁ!」

「ねぇ!困るって言うかぁ!」


 そしてイアンが戻って来る今まで強引な誤魔化しで防ぐ事に成功したのだった。


「あっ、イアンさんおかえりなさい!」

「もう休憩終わりだそうですよ!」

「え、あぁ…」


 一仕事終えて良い汗をかいたと言わんばかりの笑顔で言ってくる二人に事情の知らないイアンは引き気味に応える。


 一方、トニーは二人の間を抜けようと必死に力を入れていた。

 そんな時にイアンが戻って来て、声に応えるようにアイゼとサントがイアンに向かって身体事振り返ってしまった。


 そのせいで、力を入れながらバランスを取っていたので急に支える存在が無くなり、前に向かって二人の間に倒れてしまったのだ。


 しかし、誰も倒れた事に反応してくれず、トニーは一人痛みに耐えながらゆっくり身体を起こす。

 唯一馬の側にいた御者だけ目撃し、気の毒そうに眺めていたのだった。


 それから数度の休憩を挟みながら一行は通常よりも早いスピードで王都に入る為の四の門に辿り着いた。


「うわぁ、やっぱり王都の入り口ってなると賑やかですね」


 王都には気軽に入れない為、王都に一番近い場所であり、唯一の入り口の四の門は観光地になっていた。

 それが今では建物が建ち、小さな町程度の規模になっている。

 そして門付近は中に入る為に馬車が長蛇の列をつくっていた。


 そんな馬車の列に大量の荷物を背負った人や荷台を引いた人達が声をかけていた。

 一台一台確認の為になかなか進まない馬車向けに路上販売をしている人達である。


 手に持ちながらお手軽に食べれる庶民向けの物から皿に綺麗に盛り付けた金持ち向けの高級料理まで様々だ。


 お金を持っていそうな馬車や乗車人数の多い馬車、断る事が苦手だと思われている人が乗っている馬車には沢山の商売人が群がっていた。


 だが、それ以外にも一人残っていれば馬車から降りて軽食を食べに行ったり、お土産を買いに行く事もしているようだ。


 イアン達の乗る馬車も長蛇の列に最後尾に並ぶ。


「どれくらい掛かるのかなぁ」

「でも結構かかりそうだよ。ねぇ、サント。昼は休憩の間に少ししか食べなかったからお腹すいたし、降りて食べに行く?」

「それ良いかも。私もお腹空いたし…イアンさんはどう、」


 馬車から外を見ていると食べ歩きをしている人達が多く、軽い昼食だったのでアイゼとサントはお腹が空いて来ていた。


 同じく休憩にタナカさん(妻)から貰ったおやつくらいしか食べていなかったイアンにも一緒に行かないかと誘おうとサントは振り返った。


 だが、イアンは外の景色を見てあまりの人の多さに青褪めていた。


「ひ、人が…いっぱい…ひとが…」


 ポチとタマを無意識に探して手を彷徨わせながら、人がいっぱいと何度も呟いていた。


「…これじゃ、無理かなぁ」

「えぇ…折角美味しそうな物とかあるから、イアンさんと一緒に食べたかったんだけど」

「師匠達がいればって思うけど、こんなに人が多いところで師匠達と合流するのは難しいよね」


 ギルド前とは違い一般人が多いだけのこの場所ならもしも魔物と気付かれても人混み紛れて逃げられるだろうと思っている。

 だが、合流が難しい。


 ポチ達はみー君の掘る穴の中にいる。

 イアンが合図を送ればいつでも現れる事は可能だ。


 しかし、こんなに人の多いところでは目撃される確率が上がり、しかも建物と建物の隙間も人が少ない狭い通りも殆ど無い。

 つまり、穴から地上に出る場所が無いのだ。


 遠く離れて人の居ないところで穴から出るなら大丈夫だが、行ってポチ達を連れて戻って来る。更に食事をして元の穴に戻すという事をすると時間がかかり過ぎてしまう。



 残念だが、イアンとは馬車から降りて食事をするという事は出来ない。

 がっかりしているアイゼの側の窓が叩かれた。


「やぁやぁ、坊ちゃん!ここの名物肉サンド如何?」

「肉サンド?」


 荷台を引いた一人の商人が自慢気にアイゼの開けた窓から出来立ての肉サンドを見せる。


 肉サンドは厚切りの牛の肉の間にいろんな野菜を詰め込み、手が汚くならないように薄く焼いた小麦粉の生地を肉の周りに巻いたお手軽料理だった。


 商人の肉サンドは二種類あり、新鮮な生野菜を詰めて肉に濃い味付けをした物と味付けして焼いた野菜を詰めて肉には適度に味が付いた物だ。


「美味しそう」


 出来立てともあり、焼いた牛の肉の良い匂いが鼻を刺激してくる。


「でしょでしょ!これ一つ銅貨5枚!さぁ、買った買った!」

「うぅ、どうするサント」

「我慢しなくていいんじゃない?」


 サントの一声に背中を押されたアイゼは三人分の代金を支払った。


「毎度!」


 アイゼは生野菜の方、サントは焼いた方を選んだ。


「イアンさんはどっちが良いですか?」

「美味しい匂いですよ」


 未だに外を見ていたイアンの近くに出来立ての肉サンドを近付けた。

 その匂いを嗅いでか、イアンは目線を肉サンドに移した。


「私のは焼いた野菜でアイゼが生野菜ですよ」

「…生」


 目の前にある肉サンドに食欲がそそられたのか、イアンは思わずポツリと食べたい方を選んでいた。


 全員の手元に肉サンドが届くとガブっと齧り付いて食べるよう商人から進められ、三人は肉サンドを齧り付いた。


「うわぁ!美味しい!」

「肉が濃い味で諄くなるのかと思ったけど野菜がそれを緩和させて、でもどんどん食べたいって思う!」

「こっちも野菜焼いた事によって甘みがあって、それが肉とマッチしてる!」


 二人の感想に商人は嬉しそうに頷いて聞いていた。

 イアンはどうだったか感想を聞いてみようと見たが、イアンは眉を寄せて食べていた。


「あれ?イアンさん美味しくなかったですか?」

「いや…美味しいけど、この味…なんかどっかで、食べた事ある…ような?」


 結局分からなかったので、考える事をやめたイアンは折角の奢りである目の前の肉サンドに集中した。


「取り敢えず喜んでいただけたんですかねぇ?是非ともお帰りの際もお買い求め宜しく!」


 そう言うと商人は前方に乗っているトニー達の方に向かって行き、三人は温かいうちに肉サンドを食べるのだった。


通貨


鉄貨1枚=10円

銅貨1枚=100円

銀貨1枚=1000円

金貨1枚=10000円

白金貨=100000円


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