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70.暴走馬車に気を付けろ

 

 翌日、イアンとアイゼとサントは集合場所であるアディスア街のギルド前に立っていた。


 結局あの後、イアンは重い足取りで薬師の里に行き、アメリアに頭を下げてお金を借りたのだった。


「…あの、イアンさん。それ取った方が…」

「なんかいろんな人見てますよ」


 イアンはいつかの更新時と同じ年季の入った冒険者の格好をしていた。あの時と同様麦わら帽子も被っている。


 麦わら帽子は畑仕事をする為の装備である為、お洒落で麦わら帽子を被っている人はいない。


 なので魔物との戦闘メインの人が集まるギルドの前に何故農作業する人がいるのかと興味津々に見ているのだ。

 薬草等を育てている人達の納品もあるが大体がギルドと専属契約しており、裏口に行く事が多い。


 一方、そんな風に見られているイアンはそれどころでは無い。

 高速で目が忙しなく泳ぎ、顔色は青褪めて最悪な状況だった。


 何故なら側にポチもタマもいないからだ。


 今回は全員で行くが、タナカさん(夫婦)は見た目から完全にアウト。

 コッコ達は見た目は鶏に見えなくないが、ドラキーが必ずくっついて来てしまう。

 なのでポチとタマ以外はみー君の掘る穴から追いかけて行く手筈になっていた。


 本当は抱えてギルド前に行くつもりだったのだが、夜よりも多い人でクアラルン街より活気の溢れるギルドに連れて来るには魔物であるポチ達にとって余りにも危険だった。


 なのでポチとタマは街の外で待たせているていで合流する予定だ。


 側にポチ達がいない不安からイアンは二人の話しを聞いておらず、それどころか普段では絶対にあり得ないアイゼとサントの手を握っているのだ。


 アディスア街に近付いたイアンは前を歩いていた二人の手を握りしめた。

 イアンのいきなりな行動に驚いたが喜んだアイゼもイアンの顔色の悪さに心配になり、ギルドに近付くにつれてどんどん手に力を込められて思わず顔を顰めてしまうサントだった。


 そんな最中、一台の馬車が三人の前に止まった。

 ギルドの紋章が描かれている馬車であったので、もしやと思っていると予想通りギルド職員のトニーが降りてきた。


「よし、皆んないるな。乗れ」


 トニーは三人いる事を確認すると三人を馬車の横の扉から中に押し込んだ。

 左右に向かい合って座ったのを見て、直ぐ様出発すべくトニーの隣に座る御者に声をかけると馬車は動き出した。


「あ、あの…わっ!?」

「きゃっ!?」


 一声も出せないイアンの代わりにアイゼがポチとタマを拾ってもらうようトニーに声をかけようとした。

 ところが馬車が動き出した途端、普通の馬車ではあり得ない速さで走り出したのだ。


 サントは進行方向と逆側に座っていたおかげで倒れる事は無かったが、思っても見なかった速度にバランスを崩しそうになり、慌てて窓枠に捕まる。

 だが、何も掴まっていなかったアイゼは前に向かって倒れた。


 アイゼの前に座っていたイアンはアイゼがぶつかってきた衝撃でハッと正気に戻り、自分が既に馬車に乗っている事に気付いた。


 馬車の異常な速度も何故アイゼが突っ込んで来たのかも不思議に思っていると馬車が街の入り口を出たところを横目で見えた。

 そして門の端の方、ポツンと佇んで待っているポチとタマが見えた。


「えっ!?はぁっ!?」


 身体が後ろに引っ張られる感覚に抵抗しながら窓に張り付くが、どんどんポチとタマが小さくなっていく。


「ポ、ポチぃ!!タマぁ!!」


 叫んだところで馬車は止まる事は無かった。



 ◇◇◇



「休憩だ」


 一時間後、あの速さを保って走り続けた馬車が漸く止まった。トニーの一言で酷い体勢でいたせいで三人はぐったりしていた。


「や、やっと…止まったぁ」

「ひ、酷い目にあった…」

「アイゼ無事?」

「なんとか…イアンさんは、」

「ひぃ!?イアンさん!?」


 一方イアンはみー君達が気付かなければ、ポチとタマを置いてきてしまったかもしれないという恐怖から白目を剥いてほぼ気絶状態だ。


「ちょっとしっかりして下さい!」

「イアンさん!」


 肩を揺らすがピクリとも反応しないイアンにどうしようと思っていると扉と逆側の窓からコンコンと音が鳴った。


 そちらに振り返るとポチとタマが窓を叩きながら、こちらに向かって手を振っていた。


「師匠!」

「イアンさん!ポチさんとタマさん居ますよ!」

「ぅぇ…」


 ポチとタマの名を聞き虚な目をしながらも意識を取り戻したイアンは窓の方に視線を向ける。

 そしてポチとタマの姿を確認するとカッと目を開き、外へ飛び出した。


「ポチ!タマ!」


 駆け寄るとみー君の頭に乗っていたポチとタマがイアンに向かって飛び付いた。


「にゃー!ご主人に置いて行かれたと思ったですにゃ!」

「ワンワン」

「悪い…でも、良かった…みー君、気付いてくれてありがとうな」

「ーー!」


 みー君は地中からスキルを使ってイアンの位置を常に確認していた。

 ポチとタマとは後で合流する事を聞いていたのに門の辺りで止まる事もなく、物凄いスピードで進んで行くのに気付いた。


 不審に思ったみー君がタナカ(夫婦)達と相談して確認の為に気を付けながら地上に顔を出すとポチとタマが世間話をしながらその場で待っていたのだ。


 それからポチとタマを回収したみー君はイアンの後を追って一時間、必死に穴を掘り進めたのだ。


 イアンは少しでも疲れが取れるようにとみー君に回復スキルを使った。

 タナカさん(妻)がみー君の穴から持って来ていたおやつを休憩に食べてくれと渡し、イアンは休憩終わるギリギリまで皆んなの側にいるのだった。


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