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55.イアンとタナカさん(夫婦)後編

思ったより長くなってしまったので、一部前編に付け足しました。

 

 イアンが起きる少し前、スケルトン達は必死になって走っていた。


「えいっ!」

「ぎゃぁ‼︎」


 後ろからハンマーの打ち付ける音とリッチの叫ぶ声が聞こえる。

 離れている筈なのに音は一定のまま、それどころかだんだん近付いて来ているようだ。


 つまり、リッチがスケルトンを追いかけながら逃げているという事だ。しかも、スケルトン達より走るスピードが速い。


 スケルトン達はこのままでは追いつかれる。そう思っている時にふと横にそれた所に家の玄関らしきものが見えたのだ。


 何故こんな所にと思いつつも、思い切って近付いてみた。

 近付いてみると扉程の大きさに開いた空間の奥に二階建ての家が建っていたのだ。


 近付いて見なければ分からないこの特殊な空間ならもしかしたら逃げ切れるかもしれない。


「カタ」

「カタ」


 スケルトンはこの怪しい空間の中に入り、外から見えなさそうな少し奥の方へ行って座り込む。


 このまま気付かれずに過ぎ去れば良い。そんな事を思って気配を少しでも消そうとしているとガタッと音が聞こえた。


 まさかもう追いつかれたのかと身体を硬くしたが、どうやら音がしたのは家の方からだった。


「あ⁉︎閉め忘れた⁉︎」


 そんな声が聞こえたと思ったら目の前で入り口が無くなってしまった。


「カタ⁉︎」

「カタカタ!」


 入り口のあった所を触っても見えない壁が跳ね返すだけで開く事はなかった。

 リッチやあのパーティーから逃げる事は完全に出来たが、その代わりここから逃げられなくなってしまった。


 途方に暮れたスケルトンはその場に座り込むしか無かったのだった。



 ◇◇◇



 夜が明けた。

 スケルトンは日光が当たると身体が朽ちてしまうので、朝が来る前に暗い場所に避難するのだ。


 スケルトンは日が登り始めると慌てて何処かに隠れようとするが、何も無い。だが、運が味方したのか、急に雲行きが怪しくなって日を遮ったのだ。


 しかし、いつまでも此処に居れない。

 この状況を打破するのは昨夜の声の主に会う事だ。


 そして、丁度良いタイミングで声の主であるイアンが家から出て来た。


「ふぁ…ねむ」

「なんにゃ、ご主人夜更かししたですにゃ?」

「…ポチ、タマの耳は役立たずだなぁ」

「、クゥン」

「にゃ⁉︎」


 出て来た居イアンを見て驚く。人間と魔物が意思疎通は勿論、親しげにしているのだ。

 本来ならあり得ない景色だった。


「ワン?」

「どうした、ポ、チぃぃい⁉︎」


 スケルトンに気付いたポチの声に反応してイアンも同じ方を向く。そこに居る筈もないスケルトンが立っている光景にイアンは叫ぶ。


「す、スケルトン⁉︎しかも二体⁉︎ポチ、タマ!攻撃だ!」

「ワン!」

「にゃ!」


 スケルトンは凶暴と一般的な認識である為襲われる前にとイアンは直ぐ様戦闘態勢に入る。

 だが、スケルトンは戦う理由がない。魔物と仲良くしているなら、もしかすると話し合いでなんとかなるかもしれない。


 攻撃をして来る合間にスケルトンは戦う意思が無い身振り手振りで必死にアピールする。

 その行動に違和感を覚え、ポチとタマは攻撃を止めた。


「ポチ⁉︎タマ⁉︎えっ、なんで攻撃止めたんだ⁉︎」

「ちょっと待って下さいにゃ。このスケルトンは何か違う気がしますにゃ」


 タマがイアンを止め、その間にポチがスケルトンに話しかける。

 必死のアピールが功を制した事に安堵しつつ、自分達に争う意思は無い事を伝える。


「ワンワン?」

「カタカタ」

「カタカタ」

「にゃるほど」

「…何言ってんのかさっぱり分からん」


 タマもいつの間にかポチ達の会話に加わっていた。

 イアンは人語を話す魔物以外はテイムしていないと分からない。だから、一人除け者にされていた。


「そうにゃ!立ち話もにゃんだから家に入るにゃ」

「ワン!」

「え、家の中に入れんの?」


 タマが先頭にポチもどうぞと招き入れる。スケルトンもすれ違いにイアンにお辞儀しながら中へ入って行く。

 家主は俺なのにと腑に落ちないままイアンも再び家の中に戻るのだった。


 一応、お客(?)なので戻ったイアンはお茶を二つそっとスケルトンの前に置いた。

 出してからスケルトンってお茶飲めるのかという疑問を持ったが、その前に普通に口をつけているのを見て席に着いた。


「ふーん…で?お前らの目的って何なの?」


 お茶を飲みながら此処に来るまでの流れをポチとタマが通訳しながら伝える。

 取り敢えず、此処に侵入してしまった経緯は理解したが、スケルトンに逃げてまで成し遂げたい事がイアンは気になった。


 スケルトンは基本殺意が強い人間が魔魂に寄生される。だから凶暴性なスケルトンが多い。

 その中で凶暴性も無い稀なスケルトンが目の前に二体。

 気にならない訳がない。


 そう問われ、スケルトンは自分達の目的を呟く。


『子供に会いたい』


「子供、ねぇ…その想いでよくスケルトンになったなぁ」

「ご主人に子供が居ないから分からない感情ですにゃね」


 タマの言い方に少しムッとしたイアンだったが、怒る事は後にしてスケルトンにもう一つ聞いた。


「その会いたい子供、どこにいるか知ってるのか」

「カタ…」

「…その様子じゃ覚えて無さそうだな」


 スケルトンは子供に会いたい事以外何も覚えていなかった。しかも、その会いたい子供の名前も姿形も男の子か女の子かさえも忘れてしまったのだ。


「これからどうするんですにゃ?」

「カタ、カタカタ」

「カタカタ」

「なんだって?」

「取り敢えず探してみるって言ってますにゃ。もしかしたら会えたら分かるかもしれないかららしいですにゃ」


 だが、スケルトンに懸念する事があった。あのリッチだ。

 リッチがこちらを見ていた目はどう見ても地の果てまで追いかけるような雰囲気が溢れていた。

 子供を探しながらリッチから身を隠せるか不安だった。


「…なぁ、取引って言うか相談なんだけど、お前ら俺にテイムされないか?」

「「?」」

「ワン?」

「にゃ?」

「いや、この空間ってテイムする度に広がるだろ?そろそろ他にも植えたい物があって広げたいんだよ。んで、そっちのメリットはいざという時の隠れ家、怪我した時の回復可能…どう?」


 それに墓は家から近い所に建てられる事が多い。なら、この近辺の村や街にいる可能性があるんじゃないか。


 そう言うイアンに確かにと思った。

 それに安全に隠れられる場所を一つでもあるなら安心で、予期せぬ怪我をしてもスケルトンは骨を食べての修復しか回復方法がないので逃げ込めて回復出来るこんな場所は願ってもいない事だ。


「…カタ」

「カタカタ」

「ワン!」

「歓迎しますにゃ!」

「え、何て?良いの?」


 こうしてスケルトンはテイムされる事になる。その際、イアンが名前を付けるのだが、どうせなら自分達で決めても良いと言った。


 しかし、良い名前も思いつかないし、人間だった時の名前も分からない。

 戸惑っているとイアンがスケルトンに手を伸ばす。


「そうだな…俺なら"タナカ"って付けるかな」

「なんで"タナカ"ですにゃ?」

「ほら」


 そう言ってスケルトンから取った蔦についた一つの実。

 墓から出た時スケルトンに絡んだ蔦がまだ付いていたのだ。


「これ"タナカ"って実なんだよ。これ美味しいらしいから、引っかかっていたって事は墓の中に入れたのかもしれない。もしかして生前の好物だった可能性が高い。手掛かりを忘れない為にも良いんじゃないか?」

「にゃるほど。じゃあもう一方のスケルトンはどうするですにゃ?何にもついてないですにゃ」

「んー…」


 イアンはジッとスケルトンを比べ見てある事に気付いた。


「あ、このスケルトン達性別が違う」

「…同じに見えますにゃ」

「ほら、骨盤の形とか違うだろ?でも、性別が違くて墓が隣同士…頭蓋骨から見ても大体同い年くらいで離れ難い相手、同じ目的…と言う事は、」


 そこでイアンは一つの仮説を立てた。

 スケルトン達は親しい間柄で、一番の可能性は夫婦だと言う事。二人同時に事故か何かで死んでしまい、遺してしまった子供が気になってスケルトンになった。


「もしこの仮説が本当だったら夫婦してどんな精神力の持ち主なんだってツッコミたくなるけどな」

「それだけ愛が深いんですにゃ。ご主人には縁遠い話ですにゃ」

「お前、さっきから一言余計だな…まぁ、夫婦なら名前はタナカさん夫婦ってのはどうだ?」

「ワン?」

「さん付けの理由?体格的に俺より年上だろ」


 適当なような、それでもスケルトンの事を少しでも考えて付けてくれた名前。それに夫婦と言われて何故かしっくり来て、嬉しいと感じたのだ。


「よろしく、タナカさん(夫婦)」


 その日、新しい家族が出来たのだ。



 ◇◇◇



 イアンの家を拠点に分からない子供を探そうとしたが、あのリッチがまだ近くを彷徨いて中々探しに行く事が出来なかった。


 なので時間がある時は畑など手伝いをするようになった。テイムされたおかげなのか日光の下でも帽子を被れば活動出来るようになっていたので、イアンはものすごい有難かった。


 今まで、タナカさん(夫婦)はほとんど子供を探しに行く事は出来ていないが、もし会えたらきっと思いっきり抱き締めるのだろう。

 そして、イアン達とこんなふうに暮らせて大切になっている今を伝えたい。そうタナカさん(夫婦)は思う。


 持っていたタナカの実を机の上に避難させると、タナカさん(夫婦)は作業に戻るのだった。














 パキッ


 何かにヒビが入る音がした。


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