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4.テイマー、見られる

 

 昨日のピクニックへ行った広場からさくさくと山に入っていく二人。

 先頭をサントに迷いなく進んで行く。


 これが出来る理由はサントの固有スキル"連鎖の縁(れんさのえにし)"のおかげ。

 これは人にのみ発動可能で、一度出会う事だけで細い糸のような縁を結ぶ事が出来る。その糸のような縁を可視化出来、それを元にイアンの元へ行こうとしているのだ。


 今日は運良く魔物が出なかった為、山の奥までスムーズに来ることが出来た。


「もうすぐ…あ、ここだよ」

「?何も見えないけど」

「えっと、確か、こっちの方から見ると」

「あ、本当だ」


 再びある方向から見ると扉サイズの穴が開いていた。入って見ると初めて入った時と同じ光景が映る。

 あの時は急いでいたサントは改めて見る。


 石畳が続き正面に木造の二階建ての家、家の周辺は木のフェンスで囲っており、手前に綺麗な花壇がある。


 サントは家の扉を叩こうと手を上げた時裏庭からギャーギャー騒がしい声が聞こえて来た。

 あの時みたいに裏庭の方にいるんだと分かったサントはアイゼと共にフェンスと家の壁の間にある小道を通る。


 通り抜けると畑が広がっており、いろいろな植物が植えられているのが分かる。あの時家の側にある木の下で椅子に座って居た為そちらを見るが椅子はなく、何やら木の樽が置かれており、そこから湯気が出ている。


 その側にあの日出会ったポチとケットシーになっているタマが居て、畑に向かって何か言っている。


「へぇ、本当に魔物だ」

「イアンさん何処にいるんだろ?」


 見当たらないイアンの居場所を聞きに二匹の元へ行く。

 すると畑からガサガサとこちらに向かって来る足音が聞こえて来た。


 背丈の高い葉の間から出で来たのはイアンだった。

 サントはイアンと目が合い、一瞬間が空いて叫ぶ。


「きゃぁああ⁉︎」

「いやぁぁあ⁉︎」


 サントは目を隠し、イアンは再び葉の間に隠れる。何故ならイアンは裸だったからだ。






 遡る事朝日が差込む前、イアンは新しい植物を植えようと朝早くから畑の土作りをしていた。

 鍬を使える皆で畑に繰り出し、せっせと土を耕していた。


 耕し終えると家の少し離れた所に鳥小屋があり、基本放し飼いにしているがそこにした糞を発酵させたものをバケツに入れ、耕した土の上に撒いていた。


 鼻を覆うように布を巻き付けながら撒くタマはイアンにぼやく。


「くしゃいですにゃ」

「しょうがないだろ?アイツらは縄張りの為に生き物には嫌な臭いの糞するんだから。人は余り感じないし、むしろ鶏とかの方が俺は臭うと思うけどな。タナカさん(夫婦)、撒いた所から耕して!」


 少し離れた所にいた夫婦は了解を込めて鍬を振る。

 半分撒いた所でバケツが空になり、ストックしている古屋に取りに行く。


 その時悲劇が起こった。ストックしている古屋に一歩入った時、糞を踏みつけ滑ってしまった。そして山に飛び込んでしまった。


 糞まみれで戻ると皆一斉に一歩後ろに下がった。


「ご主人…くしゃいですにゃ」

「カタカタ」

「ヴゥ〜ワン!」

「好きでこうなったんじゃねぇよ!」


 思わず涙目になるイアンにタナカさん(妻)がソッとハンカチを手渡す。


「カタカタ」

「ぐすっ…あ、ありがと…タナカさん(妻)」

「カタカタ、カタカタ」

「え、お風呂用意してくれるの?しかも露天風呂⁉︎」


 一気に気分上昇。タナカさん(夫婦)で風呂の準備をし、その間にイアンとタマで続きをして、耕し終わる頃には急いで準備してくれたおかげか木の樽にお湯が張っており良い温度になっていた。


 イアンは早速と言わんばかりに服を脱ぎ捨て、側にあった石鹸で身体を洗いお湯の中に身を沈めた。


「くはぁ〜」


 朝から風呂に入る事は余程無い。しかも、自分は一切準備しなかった贅沢振り。


「あー、生き返るぅ」

「ご主人、しっかり臭い落として下さいね」

「ワン」

「分かってるって…あ、良いのがあるんだ」


 そう言って風呂から出ると何も身につけないまま畑に入っていこうとする。


「ちょっ、そんな格好で何処行くですにゃ⁉︎」

「畑の隅にお湯に入れるといい匂いする草あったの思い出してな」

「ワンワン!」

「ポチさんの言う通りですにゃ!せめてタオル巻いて下さい!」

「お前達しか居ないからいいじゃん。タナカさん(妻)も俺の着替え取りに行ってくれてるし」


 二匹が止める間も無く畑に入って行ってしまった。

 途方に暮れた時、畑からじゃ無い足音が二匹の耳に届いた。その瞬間嫌な予感がしたのか、イアンを呼ぶ。


「ご主人‼︎早く戻ってきて下さいにゃ‼︎」

「ワンッ‼︎ワンッ‼︎」


 ガサガサと葉を分け目的の物を持ったイアンが出て来た。

 イアンは二匹に応える前に目の端に何か見えた気がしてそちらに目線をやる。


 そこには昨日助けた二人の子供か立っていた。なんでまたここにいるんだと追い出そうとした時、はたと自分の格好を思い出した。


 自分は今何も着ていない、と。


「きゃぁああ⁉︎」

「いやぁぁあ⁉︎」


 二人の叫びが一帯に響き渡った。

この話はこれが今年最後の更新です。来年も見て下るとありがたいです。

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