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44.さよなら我が家

 

 全員でせっせと家から使えそうな物を運び出し、アイゼとサントは今は台所付近で作業していた。

 特にアイゼは一生懸命に働いていた。


 食器は少し欠けたりはしているが木製だったおかげで割れた物は無く、調理器具も凹みがあるがなんとか使えそうであった。

 食糧も柔らかい物が潰れていたが、それ以外は無事な物も多かった。


 ポチとタマは一緒になって運び出し、タナカさん(夫婦)は重たい物を運んでいた。

 そんな作業中、ふと疑問に思ったサントが側に来たタマに声をかける。


「でも、師匠。なんでこの空間消すんですか?」

「にゃ?」

「畑はともかく、片付ければ全然大丈夫そうじゃないですか」

「にゃー、家をよく見るですにゃ」


 そう言ってタマの指差す壁を見ると所々亀裂が入っているのが分かる。

 これでは再び衝撃を受ければ崩れてしまうのが目に見えていた。

 しかも、イアンの家は空間を維持する為の核を組み込んでいるので壊れた瞬間全て消えてしまう。


「それにご主人は元々作業部屋を広くした間取りに変えたいって言っていてたですにゃ。いい機会だったんですにゃ」

「へぇ」

「でも、家ってイアンさん達で建てたんじゃないんですか?また建てるって相当大変ですよね」

「別に俺らが建てたわけじゃない」


 畑の作業をコッコ達とみー君に任せて自分の部屋で作業していたイアンがいつの間にか卵を抱えてアイゼ達の側に来ていた。


「この家は俺のスキル『不可侵の領域』の副産物で作られた家だ」


 タナカさん(夫婦)をテイムしてレベルが上がったのを機に空間に家が出現したのだ。

 なので、空間に戻って来た時、家が目の前にあって驚愕して叫び、腰を抜かしたのはポチ達の間で笑い話になっている。


 スキル『不可侵の領域』は世間一般的には空間を一時的に作る為のスキル、レベルが上がっても空間が広くなるくらいと認識されている。


 実際そうであり、今まで他の物が現れる事例など無かった。

 イアンも最初は同じようにそう思っていたので空間を作った当時は野営して暮らしていた。


 だが、イアンのように長時間連続でスキルを発動している記録がなかった事もあり、イアン達は長期間の使用特典のような物だと結論付けた。


「だけど、一度壊れた物はどうやっても修復出来ないからスキルを解除するしか方法がない」

「でも、解除したらまた家出るまでに時間かかるんじゃ無いんですか?」

「さぁ…?なんか大丈夫な気がする」


 イアンは曖昧な返事をすると他の部屋にいるタナカさん(夫婦)に声をかけた。呼ばれたタナカさん(夫婦)は扉から頭をひょっこり出す。


「タナカさん(夫婦)、悪いんだけど休憩しようと思うからお茶の準備して欲しいんだけど」

「カタカタ」

「カタカタ」

「ポチ、タマ。この卵頼む」

「ワン」

「はいにゃ」


 ポチとタマに卵を預けるとイアンはアイゼとサントに中から椅子を外に出すように指示をすると作業していたコッコ一号、二号、みー君を呼びに畑に行く。


「なに…やってんだ」

「コケ?」


 既に畑の物を集め終えたみー君は頭の先だけ出して地面に潜って休憩していた。

 一方コッコ達は集められた野菜を啄んでいた。しかも、踏まれてぐちゃぐちゃになった物では無く、まだ食べられそうな物を、だ。


「なんで良いやつ食ってんだ!お前らこんなんでも食ってただろ!」

「コケー!」

「コケコケ!」


 イアンは鶏の部分には野菜の切れ端や形が悪い物をいつもあげていた。コッコ達はそれが普通だと思っていた為に形が歪でも気になってはいなかった。


 だが、綺麗で艶々な美味しそうな見た目の野菜は食欲がそそられた。

 怒るイアンに対してコッコ達は偶には良いものを寄越せと苦言を上げる。


「ご主人ー、準備出来ましたにゃー」


 タマが声をかけるまで言い争っていたイアンとコッコ達はイアンが折れる形で終結した。


 お茶を飲み、一休みを終えると分別して使える必要な物を一度空間の外に出した。

 不要な物はそのままにして、空間消滅を利用して捨てる事にする。


「あー、やっと運び終わった」

「まだ、戻し作業もありますにゃよ」

「言うな。考えないようにしてたんだから」


 ひとまず出し終わった事に一息吐くとイアン達は空間の外に出た。


「全員いるな?点呼」

「ワン」

「にゃ」

「カタ」

「カタ」

「ーー」

「「コケ」」

「えと、六、七だから…八!」

「九!」

「後ろ二人はどうでもいいが、皆いるな」


 人数を確認し終えるとイアンは入り口に向かう。

 入り口から見える思い出の景色を最後に焼き付け、イアンはスキルを発動させた。


「スキル『不可侵の領域』…解除」


 核を埋め込まれた家に畑からどんどん無くなり、吸い込まれていく。最後は出入口が吸い込まれて消え、スキルは解除された。

 一瞬で消えてしまった家にイアンは分かっていた筈なのに思ったより寂しさが溢れる事に眉を顰める。そんなイアンにポチは擦り寄る。


「クゥン」

「ポチ、大丈夫だ」


 頭をぐしゃぐしゃに撫でるとイアンは再びスキルを発動させる。しっかり家の希望を思いながら。


「広い作業場、広い作業場が欲しい…スキル『不可侵の領域』発動」


 イアンがスキルを発動させると手から中心に入口が出来、これまた一瞬で空間が生成された。


「『不可侵の領域』の発動って初めて見ました」

「基本的に二人でパーティー組んでるから分からないよね」


 イアンは確認の為に中に入ると平家の家と更地が広がっていた。

 家を再び出す事に成功してホッとしたが、何故か平家。前の家と同じ作りで作業場が広めになっていると思っていた。


「にゃ!ご主人、作業場しか無いですにゃ」


 先に家の中を見に行ったタマが声を上げた。イアンは慌てて見に行くと広々とした作業出来そうな場所しか無かった。

 どうやら広い作業場が欲しいと想い過ぎたせいで住める所なしの作業場だけ出来たらしい。


「…失敗した」


 イアンは再び全員外に出すとさっさとスキルを解除して、また新たにスキルを発動させた。

 今度は間取りだけが変わり、前と同じ家のある空間を作り上げた。一日に何度もスキルを発動させた事の無かったイアンは流石に疲れ、座り込んでしまう。


「あー…無理だ、疲れた」

「お疲れ様ですにゃ」


 体力が無くなったイアン以外で取り敢えず外に出した荷物を空間内に持って来る事にした。

 日が沈む頃に漸く運び終え、タイミング良くタナカさん(夫婦)が作り上げた夕食をテーブルに広げた。


「生き残った祝いと今日の頑張りに乾杯にゃー!」

「「乾杯!」」


 わーわー騒ぐタマ達についていけないイアンはポチを抱えながら隅の方に座り、タナカさん(夫婦)の作ってくれた料理を口に運ぶのだった。

















 この時、イアンは知らなかった。

 永遠の別れが訪れる事を…。

久しぶりの更新です。

特に章限りはしてませんが… 次回から新章?です。

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