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43.惨状

 

 タマの不穏な言葉に不安を覚えながら家に着くとタナカさん(夫婦)が迎えてくれた。こちらもボロボロになっていたが元気そうだった。


 ホッと息を吐こうとしたが、顔を前に向けると先の戦闘の被害が露わになった。


 畑はレインディアが踏み付けた野菜があちらこちらに散らばっていた。

 育てるのに時間をかけた果樹やあと少しで収穫出来そうな野菜のぐちゃぐちゃになってしまった物を思わず手に取るが使えそうに無い物だらけ。想像以上の被害に頭が痛くなる思いだ。


 だが、タマは眉を下げて家を指をさした。なんだと思いながら扉を開けると目の前の惨状に開いた口が閉じない。


「…うそ、だろ」


 側にいるアイゼとサントもイアンになんて声をかければ良いか分からなかった。


 レインディアとの戦闘中、何度も家に攻撃を仕掛けられたが家を守る薄い壁のお陰でなんとか守れた筈だった。


 だが、攻撃の衝撃で家の中にある物が倒れていたり、割れていたりと足の踏み場も無いくらい床一面に散らばっていた。


 レインディアのような大型魔物がこの空間に入って来た事が初めてだったので、どんな被害になるか想像も出来ていなかったのが原因だ。


 特に悲惨だったのは作業台付近だった。細かく分けて保管していた薬が散乱して混ざってしまっていた。

 こんなになってしまってはもう使い物にならなかった。


「…は、はは…ははは」


 目の前の現実を受け入れられず、壊れたように笑うイアン。

 笑い声が止むまで誰もが声をかけられ無かった。


「無理だ、どうにも出来ない」


 笑うのを止めるとイアンはこの惨状に白旗を上げた。

 片付けたとしても使えない物が多く、畑も作り直さなければいけない程酷い。


「…消す、しかない…かぁ」

「そう言うかと思ったですにゃ」

「消すって、何をですか」

「…ここ」


 肩を落としたイアンはこの空間を一度閉じる事にした。

 スキル『不可侵の領域』は解除すると中にある物も人も全て何もかも消してしまう。

 これだけバラバラだと片付けも面倒に感じ、スキルの特性を利用して全てをリセットしようと考えたのだ。


「くっそ…レインディアの、…いや、元はと言えばお前のせいかっ!」

「ご、ごめんなさいっ‼︎」


 レインディアに怒りを向けようとして大元の原因がアイゼである事に気付き掴みかかるイアン。

 胸ぐらを掴まれ、苦しそうにしながらアイゼは謝るが掴む手が緩む事がない。


「にゃにゃ!ご主人、坊ちゃんの首閉まってますにゃ」

「イアンさん止めてください!アイゼが死んじゃいます」


 慌てて二人の間にタマとサントが入り込む。

 イアンは舌打ちしながら渋々手を離した。サントはゲホゲホッと咳き込むアイゼの背中を摩る。


「大丈夫?アイゼ」

「う、ん」


 タナカさん(夫婦)が二人に飲み物を手渡し、落ち着かせようとしている傍ら、イアンはポチとタマに怒られていた。


「ご主人何してるんですにゃ!」

「ワンワン!」

「人殺しなるつもりだったんですかにゃ⁉︎」


 イアンは不貞腐れたように外方を向く。

 だが、こうなるのもしょうがない。実家と縁を切っていると思っているイアンにとってここは大切な場所。唯一の帰る事の出来る所だったからだ。


「はぁ…」

「ご主人!」

「ワン!」

「はいはい、悪かった悪かった。タナカさん(夫婦)」


 イアンは適当に返事をするとタナカさん(夫婦)を呼び、家の中にある使えそうな物を回収するように指示を出す。


「アイゼ、詫びの気持ちが少しでもあるなら死ぬ気で手伝え」

「死ぬ気で頑張ります!」


 作業に移るべく、アイゼとサントは共に近くの部屋に入って行った。見張りとしてポチとタマに二人に付くように言うとイアンは外に出た。


 イアンはそのまま畑に向かうとコッコ一号、二号が卵を持ちながら近付き、近くの地面からみー君が頭を出した。


「コケ」

「コケ」

「コッコ、みー君。良かった、お前らも無事だったか」


 わちゃわちゃと戯れあって来る三匹を撫でまくる。

 倒れる前に無事な姿を朧気ながら確認は出来ていたがしっかりした意識で見ることが出来た。これで全員の元気な姿を確認出来てイアンは漸く一息つけた。


 帰る場所が無くなる事を恐れ、戦うという判断したイアンだったが、一番恐れていたのはその判断で誰かが居なくなってしまう事だったからだ。


 今回の原因はアイゼだったが、イアンは空間の出入口をよく開けっ放しにしてしまう。今まで運が良かったが、その時に入り口から魔物が入って来る可能性がずっと前からあったのだ。


 今回はアイゼに怒れたが、もしかしたら自分自身を許せないほどの惨劇になっていたかも知れなかった。

 だから、アイゼに八つ当たりのように接したが、来てくれた事に本当は感謝だってしていた。


 あのまま来なければイアンは死に、ポチ達も契約が切れてしまえば魔物としての本能に従って暴れ、討伐されてしまっていたかもしれない。

 最悪現状だが、本当の最悪前に踏み止まれた。


「悪いけどお前らも手伝ってくれ」

「コケー」


 コッコは持っていた卵をイアンに渡すと外の使えそうな物を回収するべく、飛んで行く。

 みー君も地上に出ると全身を使い、散らばっている畑の物を集めにかかる。


 イアンも卵を抱えたまま気持ちを切り替えて、近場の使えそうな物を探しに行くのだった。

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