表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/78

3.テイマー、会心の出来


「あーあ…」

「これはタナカさん(夫)が悪いですにゃ」


 気絶したサントを眺めるイアン、タマ、そして元凶のタナカさん(夫)。

 タナカさん(夫)は手をワタワタさせながらどうしようと焦っている。その左手には包帯が握られていた。


 休憩で家の中に入った時、机の上にイアンが忘れた包帯を見つけた。それを代表としてタナカさん(夫)が走って追いかけて来たのだった。


 着いたときイアンとタマがギャーギャー騒いでいたので、話に参加していなかったサントに声をかけようと後ろに立った。タマと一緒に行ったとポチに聞いたためイアンが自分達の姿のような魔物もいると説明していると思ってしまっていたからだ。


 影が出来たことに気付いたサントが後ろを振り返った時に話しかけた。ただ、人間とは基本イアンとしか話して来なかった為、いつも通り話しかけてしまった。


 テイマーでタナカさん(夫)の主人だからこそ自分達の言葉が分かると言うことを忘れて。

 あり得ない存在がいた為、サントは気絶してしまったという事だった。


「どうするかなぁ」

「流石に意識のにゃい二人を残して帰らにゃいですよね?」

「でもなぁ…人には会いたく無いし、かと言って家に連れていくのも嫌だなぁ…あ!そうだ」


 良いこと思いついたとイアンは箱を漁り出す。取り出したのは一枚の木皿。


「何するにゃ?」

「乳鉢に紫の実を入れて潰すだろ。これをインク替わりに皿に丸描いて、この上にナイフで穴二つ開けて…タナカさん(夫)こっち来て!」

「?」

「さっきタマが持ってきたこれでこれを…頭に固定して」

「えっ⁉︎まさかご主人、これでタナカさん(夫)にっ⁉︎」


 会心の出来と言わんばかりに満足気にするイアンにタマは不安そうに見た。












 誰かの呼ぶ声がする。

 瞼を震わせ、サントは目を覚ます。


「サント!」

「おかあ、さん?」

「あなた!サントが目を覚ましたわ!」


 声をかけていたのは母親だった。周りを見るとサントが目を覚ましたのはいつもの自分の部屋。

 母親は部屋の外にいる父親を呼んでいる。


 慌てて入ってくる父親は心配そうに起き上がったサントの肩を掴む。


「大丈夫かサント⁉︎」

「う、うん…?」

「おまえを変なお面をした奴が連れて来たんだ」


 父親の話を聞くとサントが昼のピクニックからなかなか帰って来ず、心配になった父親が辺りを散策しようと町と山の出入口まで来た時だ。


 その出入口付近に見知らぬ者がしゃがんで地面に二人の子供を降ろしていた所だった。その内の一人が自分の娘だと気付き、父親は急いで近づこうとして歩を止める。


 何故なら相手は帽子にエプロン長靴を履いて普通の人に見えたのに顔を上げた時相手は木の皿みたいなお面みたいな物を顔に付けていたからだ。しかも歪んだ丸い目、にっこり笑っている口が描かれていた。それが不気味さを醸し出していた。


 不審者は父親がこちらを見ていることに気づいたのか慌てて森の方へ逃げて行った、という事だった。


「(イアンさんが送ってくれたって事?でもその姿、私が最後見た骸骨にそっくり…確かイアンさん、タナカさんって呟いていたような…)あっ、お父さん!アイゼは⁉︎」

「彼なら大丈夫だよ。医者が適切な処置されていたと言っていたからな」


 ホッと息を吐く。イアンなら大丈夫と思っていたがやっぱり医者が大丈夫と言う事に安心した。


 早速アイゼの元に行こうとしたサントを父親が止める。


「今日はこのまましっかり休みなさい。外傷は無いとはいえお前も倒れていたんだから」

「大丈夫だよ」

「お願いよ、サント。私達を安心させて」


 父親と母親の説得でサントは今日は休む事にした。サントは早く明日になってアイゼに今日あった事を話したかった。


 次の日、朝食を終えたサントは急いでアイゼの家に向かう。サントが家に着くとアイゼが家の外に立っており、サントは声をかけた。


「アイゼ!」

「サント、おはよう」

「おはよう。もう大丈夫なの?」

「全然大丈夫。サントが助けてくれたんだよね。ありがとう」

「私じゃないよ。あのね、アイゼ。昨日…」


 そして昨日のイアンとの出会いを話し出すサント。全てを聞き終わったアイゼは少し考えた後顔をあげる。


「サント、その場所分かる?」

「うん、多分…え、もしかしてアイゼ行こうとしてるの?」

「助けてくれたんだ。お礼くらい言わないとね」

「でもアイゼ怪我してるし、それに昨日みたいにまた迷ったら…」

「サントなら大丈夫でしょ?」


 サントなら大丈夫と確信したアイゼがサントの返事を聞く前に歩き出してしまった。躊躇いがあったが一人に出来ず、後を追いかけることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ