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22.勇者は思ったより身近にいる 前編

 

 地べたで話出そうとしたアイゼをこんなところではとタナカさん(夫)が立たせ、椅子に座らせる。

 円卓の上座にイアンが座り、両隣にポチとタマが座る。イアンの正面にアイゼ、両隣にタナカさん(夫婦)が座り、話を聞く態勢が整う。


「で?こんな夜遅くにぃ、俺のスキルに干渉してぇ、人ん家に不法侵入したぁ、理由を話せ」


 皆んながイアンを見た為聞く事にはしたが、寝ているところを叩き起こされ、それが顔見知りの犯行で気分がガタ落ちしていた。

 イライラした態度を隠すことなくアイゼに詰め寄るイアンにまぁまぁと隣に座ったタマが抑える。


「でも明日パーティーするって約束してたのにわざわざこんな夜に来た理由ってなんですにゃ?」

「その…逃げて、来たんです」

「はぁ?」


 逃げて来た発言に意味が分からないと顔をしかめる。

 今日はアイゼ達は職業を授かる為に隣街に行っていた。だが、ただそれだけの日、特に逃げる事になる事態があるとは思えなかった。


 アイゼはイアン達に今日の出来事を話し出した。


 ◇◇◇


 今日、隣街に職業を授かりに町で十三歳になる子供とその親が集まり、何台かの馬車で向かった。

 同じ馬車にサントが居たのでアイゼはサントと喋る事が出来て退屈な時間を過ごさなくて済んだ。

 ただ、両親の代わりの町長夫婦は体裁の為だったのかも知れないがついて来ていた。


 街に着くと教会付近では近隣の町や村から来た多くの子供とその親が居て、教会の中に入る列にアイゼとサントも並んだ。

 親は教会の側の建物で待つ事になる。


「アイゼはどんな職業が良い?」

「俺?そうだな…なんでもいいけど、イアンさんと一緒だったら良いな」


 なりたい職業になれれば良いと希望を持って、未来に夢を見ていた。


 部屋はそこまで広く無いので六人ずつ『神の間』に入って行き、職業を授かって嬉しそうだったりガッカリしたりといろいろな子供達が出て行くのを横目に、とうとう自分達の番になった。アイゼとサント、他四人と共に『神の間』に入る。


 他の四人の後にサント、アイゼの順番で中央に置いてある台座の玉に触れると神から職業を授かる。

 与えられた証として一時的に台座の側にある石板に名前と職業が刻まれる。職業を授かると同時に固有スキルを授かるとそれも刻まれる。

 刻まれた内容を記録係が記録して戸籍に登録されるという流れだ。


「行って来るね」


 サントの番になり、台座の前に立って玉に触れる。玉が淡く光り、石板に文字が刻まれていく。


『サント 魔術師』


「魔術師⁈私が?」


 家族には魔術師に関わるような職業を持っている人が居らず、まさか魔術師を授かるとは思っていなかったサントは目を白黒させていた。


 魔術師は魔法を覚えられる職業だが当たりとも外れとも言えない職業とされていた。人によって魔法を覚えられる数に差がある為だ。

 修行していけば威力が上がったりするが、一つの魔法だけしか習得出来なかった事例もある。

 最強になれるか最弱になるか運と努力次第の職業だった。


 サントは喜んで良いのか悩みながら戻って来る。

 いよいよ、アイゼの番になり台座の前に立って玉に手を触れた。


 ◇◇◇


「それで…俺の職業は…」


 アイゼは急に口を濁し、口を開いては閉じを何度も繰り返す。

 そんなアイゼを見て、言うまでに時間がかかるなと思ったイアンはツマミでも取ってこようと席を立とうとした時、アイゼは覚悟を決めてイアンに問いかけた。


「イアンさんは…神さま、見たことありますか」

「はぁ?」


 今の話の流れで何故神さまと言う単語が出て来たかイアンは分からなかった。それはポチ達も同じで、一様に首を傾けていた。


「神さまってあの神さまですにゃ?職業授けてこの世界見守ってます的な神さまですかにゃ?」

「…はい」

「…お前、ふざけてんのか?職業の話がなんで神の話になるんだ」


 イアンは意味の分からない発言に自然と声が低くなって、アイゼを睨む。

 睨まれた事にアイゼは肩をビクつかせながら首を横に振る。


「ふざけて、無いです…俺、玉に触れた時、見たんです」


 ◇◇◇


 アイゼが玉に触れると淡く光りが灯る。

 その光りがいつの間にか辺りを覆い、真っ白で何も無い空間にアイゼは一人立っていた。

 身体を動かしたくても石のように固まり、声も出すことが出来なかった。


 ふと影ができ、上から何かが降りて来る。

 綺麗な女性が髪を靡かせながらアイゼの前に降り立った。背中から人間には無い白き羽を生やし、何故か跪きたくなるような神々しさがあった。


 驚愕に目を開いているアイゼの顔に手を添えて、女性は額に祝福するかのように口付けを贈る。


 ハッと気付くとあの真っ白な空気では無く、『神の間』にいた。


「さっきのって…」


 辺りをキョロキョロ見ても誰も慌てた様子も無かった。職業を授かる人は全員見るのかなと思っていると石板にアイゼの職業が刻まれる。


「これは…⁉︎」


 アイゼの職業に辺りの大人達がざわつき始めた。

 そんなに変な職業だったのかと慌てて自分の職業をアイゼは確認をする。


『アイゼ 剣士"勇者" 固有スキル・絶対断切(ぜったいだんせつ)


「え…?ゆう、しゃ?」

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