1.テイマー、面倒事に巻き込まれる
誤字脱字、表現の仕方下手で、見辛いかもしれません。よろしくお願いします。
更新頻度は低い予定です。
「はぁ、はぁ」
木が生い茂る森をひたすら走り続ける一人の少女。泣きそうになるのを我慢してひたすら走る。
少し前の事、幼馴染みの少年と森の方へピクニックに来ており、たまたま見つけた小動物を追いかけていたらいつの間にか森に迷い込んでしまっていた。
戻ろうと歩く度森の奥へと進んでいるような感じがしていた時、二人の前に蛇のような魔物が現れた。
木の棒で追い払う事には成功したが、少年が少女を庇った時、魔物の尻尾が腕を掠っていた。この魔物は牙と尻尾に毒を持ち、動く度毒が広がり死んでしまうものだった。
気づいた時には少年は動けなくなっており、荒い呼吸をしながら倒れ込んでしまった。
自分の所為だと思った少女は、少年を助ける為に薬草を探そうとしたが、少女にはそんな知識も無く断念せざるを得なかった。
こうしている間にも少年が死んでしまうと少女はある決意をした。
少年を置いて、人を探しに行く。
自分では少年を運びながら元の場所に戻る事は不可能。なら、身軽な状態で急いで探せば助けられるかもしれない。
そうして少女は走り出した。
だけど、走っても走っても景色は変わらず、目に映るのは木ばっかり。
このままでは少年だけでは無く少女の命も危ない。ならいっそう、戻って少年と一緒に最期を迎えた方が良いのかもしれないと走る足を止めてしまった。
荒い息を吐き、来た道を戻ろうとした時何処からか鼻歌が聴こえた。バッと辺りを見渡しても何も無い。
一瞬魔物かと思ったが、音程が偶にズレたりしているがこの曲は少女の母親が好きな曲。
「すみません‼︎誰か‼︎」
応答は無い。けど一向に歌は止まない。少女は耳を澄まし、聴こえて来る方にゆっくり向かう。
しかし、音の方へ向かって行った筈なのにどんどん遠ざかる。まるで歌の場所を通り過ぎたかのように。
どうしようと後ろを振り返ると、そこに今までいなかった景色が映る。
森の風景にポッカリと扉サイズの穴が開いていたのだ。
さっきまでは確かに何も無かった筈だった。けどそこから覗く景色は石畳があり、その奥には家があったのだ。しかも、そこから歌が聴こえて来る。
怪しさ満点。でも、このまま入らないと次に人といつ会えるか分からないし、少年がそれまで保つか分からなかった。
恐る恐る入ると特に罠も何も無く、ただ普通の家が目の前にあるだけだ。
扉に近付き、ノックする。
「あの、すみません!」
だけど応答は無かった。肩を落としていると家の裏の方から鼻歌が続いている事に気付いた。
家の壁とフェンスの間に人一人分通れる道がある。少女はそこを通って裏に出る。
ここは森の筈なのに家がある事も不思議だが、森の一部が切り開かれ畑が広がっていたのだ。
唖然としている少女はゆっくり辺りを見渡すと家の側にある木の下に椅子に座って歌っている一人の青年に気付いた。
少女は勇気を持って近付き、声をかける。
「あ、あのっ」
「ふふ〜ん…ん?」
少女の声に気付いて青年は振り返る。間を置いて驚愕に目を見開いて叫んだ。
「に、人間だぁぁああ⁉︎⁉︎」
脱兎の如く側の木に隠れ、少女を観察するようにひょっこり顔を出す。
「なななな何で此処に人が…まさか、扉開いてた⁈」
訳の分からない事を呟く青年に不思議そうに見ていた少女は、少年の事を思い出して青年に頭を下げる。
「魔物に襲われて友達が怪我してるんです!友達を助けて下さい!お願いします!」
「え、嫌です」
必死に頼んだ少女は即答で断れると思わなかったのか呆気にとられ青年を見つめる。青年は腕を伸ばし指を突き付ける。
「一に魔物が彷徨いている外に出たく無い。二に助けられるか分からないしもしダメだった時俺に責任を押し付けられたら嫌だ。三にこれで何かしらの縁が出来るのは困る。そして、一番は…俺は人間嫌いだ、関わりたく無い。以上」
「そんな…私、なんでもします!だからっ」
「へー、じゃあ死んでくれる?」
「え」
「ほら、出来ないでしょ?なんでもなんて言うヤツほど信用ならん」
「そんな…」
確かに助けて欲しいなんて少女の都合で、断れる事だってあったのにその可能性を除外していた。絶望が少女を襲う。
「ぃっだぁ⁉︎」
そんな空気を壊すかのように急に声を上げる青年の尻に犬が噛み付いている。青年が手で払うとすぐに離れる。
「いってぇ…何すんだポチ!」
「ワンッ!」
「え、助けに行けって?なんで俺が…」
「ヴウゥ〜」
「ひっ、怒るなよぉ…分かった、分かったから!お前、ポチに礼を言えよ!助けてやる!」
「えっ」
バタバタしながら裏口から家の中に入って行く青年。家の中からガタゴトと音が響く。
急展開に分からなくなっている少女に近付くポチと呼ばれた犬。ポチはペロペロと少女を慰めるように舐める。
恐る恐るポチを撫でる少女に嬉しそうに頭を擦り付ける。
「よし、準備完了だ」
先程家に入った青年が大きな箱を背負って戻って来た。その声に反応してポチが青年の元に走っていく。
「ポチ、お前は家の留守番を頼む。後タナカさん夫妻に休憩してもらっててくれ。タマー!」
屋根の上からタマと呼ばれた猫が降り立って来た。青年は二匹に手を翳す。
「ポチ、タマ。転身」
二匹の足元に魔法陣が展開され、姿形が変わっていく。
変わったその姿に少女は怯える。目の前に現れたのは魔物だったからだ。
「…コイツらを怖がるなら、助けない」
そう言っても少女は先程襲われたばかり。なかなか無理な話だった。そこに仲裁を入れたのはタマだった。
「まぁまぁ、ご主人。今はいいじゃにゃいですか。ニャアはケットシーのタマですにゃ。さぁ、お嬢さん行きましょう」
差し伸ばされた手を思わず掴んでいた少女。柔らかい肉球だと思ってフニフニと握る。
「お前…えー、と」
「ぁ、サント…です」
「サント、な。早く行くぞ」
「は、はい!あ、あの…貴方は」
「別に名乗る必要なんて…」
「ワンッ」
再びポチに怒られた青年は渋々のように名乗る。
「あー…俺はテイマーのイアン。今だけよろしく」