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16.テイマーとケットシー 中編

 

 抱き上げられた時には限界で子猫は気絶してしまい、目を覚ました時には先程の人間の男の家だった。

 男は作業台に座り、ゴリゴリと何かを擦る音が聞こえる。


 いつの間にか身体の汚れも取れ、細かい傷が手当てされていた。ここは今までより安心出来る場所なのかと思うとぐぅぅとお腹が鳴った。少し気が抜けてしまったようだ。


 男の足元にいた犬がピクリと耳を動かし、子猫の方に振り返り目が合う。犬は男の服の裾を咥え、軽く引く。

 男は作業の手を止めて犬を見ると犬は子猫の元に歩いて行くので目を覚ましたのかと気付いた。

 男は立ち上がり子猫の元へ来ると頭を撫で回す。


「二日も眠り続けたから流石に不安だったけど大丈夫そうだな」


 優しい手つきで撫でられ、目を細めたがふんわりと香料の香りがして子猫は一瞬最初の女性を思い出してしまった。少し身体を硬くした事に気付いたのか偶然なのか男は子猫から手を離し、部屋から出て行く。


 離れてくれたことに少し安心感を覚えたと同時にもっと撫でてほしかったと思ってしまった。

 自分の感情に疑問を浮かべている間に男は片手に小鉢もう片方に深めの皿を手に戻ってきた。

 深めの皿を犬に小鉢を子猫前に置く。


「好みが分からないけど食べたいなら食べな。ポチも昼だから一緒に食べてくれ」

「ワン!」

「はぁ…後はスープとはいえ自分の分の昼食を用意するの面倒だな」


 溜息混じりに男はまた部屋を出て行った。犬ことポチはガツガツと皿に入っていたご飯を食べる。

 子猫は目の前に置かれた小鉢を見ると同じように餌が入っていた。


 本当に食べて良いのかどうしようと思っていると早くも食べ終わったポチがいつの間にかジッと見ていた。

 それに気付いて思わずビクッとしたがポチは小鉢に目を移してまた子猫を見て食べないの?と言うように首を傾ける。


 再びぐぅぅと鳴るお腹。

 恐る恐る小鉢の餌を食べる。


「!」


 美味しい!

 先程のポチのようにガツガツと食べるが量が少なく、直ぐに食べ終えてしまった。

 イアンのご飯美味しかったでしょ?と聞くポチに全然足りなく文句を言うように尻尾をペシペシと床を叩く。


「ワン」

「にゃ?」


 こっちに来なよと呼び歩き出すポチに不思議そうについて行く。


 部屋を抜けて違う部屋に入ると台所らしき場所に出る。台所ではイアンという男が鍋の前に立ってグツグツ何かを煮ているところだった。


 音を立てないようにそろりそろりと侵入し、椅子に上がるポチに続くように子猫も隣の椅子の方に飛び乗る。

 ポチは前足を机に乗せ、机の上のものを見る。子猫からは見えなかったので更に机に飛び乗るとパンとサラダ、メインの魚と男の昼食が並んでいた。


 美味しそうな魚に涎が溢れて来て、ポチを見ると頷いて行けっと雰囲気を感じ、子猫は魚に齧り付いた。

 さっきの餌も美味しかったが、これはそれ以上の美味しいだった。


「よし、完成。さて、とぉ⁉︎」


 スープを完成させて盛り付け、昼食を食べようと後ろを振り返ると子猫がイアンの魚を食べているところだった。


「お、俺の久しぶりの鮭が⁉︎ちょっ、お前!」


 慌てて子猫の首根っこを捕まえても鮭から手を離さず、鮭の方を遠ざけようとしてもその執着から逃さず、イアンは諦めざる終えなかった。


 それから子猫は元気になり、イアンは子猫を何度も逃がそうとしたがその度逃げ回り、ポチの説得もあってここに住み着く事になった。


 ずっと名無しでは面倒だという事で子猫は『タマ』という名前をもらった。


 タマは気ままに家の中で動き回り、慣れた頃に外へ出るようになった。久しぶりの外でテンションが上がったのかポチが止める間も無くダッシュで畑中を駆け回り、ぶつかった。

 急に現れた壁になんだと目を向けると二羽の魔物コカトリスがいた。


 まさかこんな所に魔物がいるとは思っていなかったタマは尻込みしながらも、ここで引けばイアンが襲われてしまうかもしれないと弱々しい威嚇をする。

 そんなタマを逃がさないようにコカトリスはタマの周りを彷徨く。


 そこにポチが慌てて来て、コカトリスことコッコ一号、二号を止めに入った。

 実はタマをここに置く事にした時、イアンが先に教えに行っていたのでコッコ達はここの新入りだと知っていて揶揄っていただけだった。


 タマは怒りながらコッコ達を追いかけたが、いつの間にか逆に追いかけられ、ご飯の時間になるまでポチも加わって遊び続けた。


 イアンは畑の手入れや川や海に行って魚を釣ったり、近場で罠を張って肉の確保、薬草を調合したりとマイペースに日々を穏やかに過ごせる暮らしをしていた。

 そんなイアンの傍でタマものんびり暮らしていた。


 何もせずにのんびり過ごしているせいで進化する兆しが全く無く、でもそのままでいいかもしれないと家から飛び出した頃の気持ちを忘れたかのように欠伸をしながらタマは考えていた。


 そんなある日、数日前に仕掛けた罠を見に行くことになった。そして今日の付き添いはタマである。

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