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15.テイマーとケットシー 前編

 

「いいか!仕方なくここにいる事を許可してやったんだから絶対そこから動くなよ」


 そう言って二人はこの間と同じ部屋に通され、タマと一緒に待つ事になった。

 アイゼとサントにきつく言いつけたイアンはタナカさん(夫)と一緒に先程持って帰ってきた釣った魚を庭先に干す為に外へ出て行った。

 

 タナカさん(妻)は二人に飲み物を置いてタマの持っていたトキシラナイと他の魚を使った昼食を作るべく台所へ向かう。

 一方ポチはコッコ達のところへ帰宅の報告を兼ねたバトルをしに行っている。そして二人のお目付役としてタマがここに残っていると言うわけだ。


「そう言えば師匠、気になる事があったんですけど」

「にゃ?」


 イアンが人嫌いの為、現在の町の様子や流行を聞いていたタマにふと思い出したようにサントは質問をする。


「師匠はケットシーですよね」

「そうですにゃ」

「なんで聖獣じゃなかったんですか?」

「あー…」


 この世界にケットシーと呼称される存在が二種いる。


 一つは魔物のケットシー。タマはこれに属する。見た目がぽっちゃりで二足歩行するのが特徴である。そして、ズル賢いとされていて、魔王の従臣の個体も存在するとされている。


 もう一つは聖獣のケットシー。すらっとした見た目で、中には羽を生やした個体も存在する。こちらのケットシーは金運を呼び込み、宝物を司る神の遣いともされている。


 ケットシーになれる可能性を持つ普通の猫が環境によってどちらかに進化し、ケットシーは生まれる。

 飼い主から愛された場合は聖獣に、理不尽な扱いをされ人を嫌うようになれば魔物になると実証されている。

 そして飼い主はテイマーである事が多く、聖獣ならそのまま契約する場合が通例だ。


「それ俺も思ってました。だってイアンさんがタマさんの事大切にしないなんて考えられないですもん」

「イアンさんが魔物しかテイム出来ないとしても側にいるだけだったら魔物より聖獣としていた方が居やすかったんじゃないかなって思って」

「そうですにゃねぇ…」


 ズズッとお茶を啜ってタマは少し考え、いい事を閃いたかのようにパッと顔を明るくさせた。


「にゃふふ!なら二人にご主人と華麗な私の出会いの物語を聞かせてあげるにゃ!」


 そう言ってタマは語り出した。


 ◇◇◇


 今から四年前。

 とある田舎の村のとある家に居た真っ白な母猫が出産をした。三匹の雄猫と二匹の雌猫の子猫が生まれ、兄弟仲良くすくすく育っていった。

 そんなある日、子猫の一匹に天啓のようなものが降りた。


「にゃ!(自分は選ばれた存在だ!)」


 そう悟った子猫は母猫が止める間もなくすぐさま家から飛び出した。

 ケットシーになれる可能性を持つ猫は何故か人の集まる場所に行きたがり、大切にしてくれた飼い主や家族と離れたく無いという思いより、行かなくてはいけないという本能に負けてしまう。

 子猫は一晩かけて隣町にやってきた。自分の運命を左右する人間に出会う為に。


 ここの街は近くにダンジョンがあり、そこに行くべく人の拠点として栄え、往来が多かった。

 子猫は早速道の端でにゃーにゃー鳴き出した。こうすると子猫が気になる人間が立ち止まり、自分を拾ってくれると何故か知っていた。

 そして、その人間こそ運命を決める人間だ。


「あら〜?子猫ちゃんがいるわ」


 一人の女性が子猫の前で足を止める。女性はしゃがむと子猫の両脇に手を入れ、抱き上げる。

 女性が子猫の頭を撫でる手が気持ち良くて、もっとと頭を擦り付ける。仄かに心地よい香りがする。


「子猫ちゃん可愛いわねぇ、うちの子になる?」

「にゃ〜」


 この女性(ひと)が運命の人間だと思い喜んでついて行った。

 しかし、連れられた家に入った瞬間、後悔した。先程まで仄かに香る程度の良い匂いがこの家中に充満しており、悪臭になっていた。


 常にこの環境で暮らしていたであろう女性は気にせず部屋の中へ入っていく。

 鼻を押さえても防げない匂いに頭が痛くなる子猫は、更に絶望を知る。


「あら〜?アロマオイル切れかけてるわ。追加追加」

「⁉︎」


 凄い匂いは残り香だったらしく、女性は再びオイルを足して匂いが溢れ出る。もう息も出来なくなった子猫は暴れて腕の中から抜け出し、外に飛び出した。

 慌てて追いかけた女性を振り切り、子猫は街の中に姿を眩ませた。


 先程とは離れた道の脇に再び座り込み、新たな候補が現れるのを待つ。しかし、先程の家の香りが子猫に移り、通りすがる人は顔を顰めて通り過ぎる。


 子猫も自身の匂いを嗅ぐと香る匂いに眉を寄せる。匂いが消えるには少し時間がかかると肩を落とした。


 それから何度か興味ある人が来て子猫を拾ってくれる人が居たが運命の人間じゃないと逃げ出してしまう事が何度もあった。いかにも暴力的な人や一番は模様に文句を言ってくる人が多かったからだ。

 曰く額の第三の目みたいなのどうかと思う。曰くどうせなら真っ白が良かった。


 だんだん人を嫌いになりかけていた子猫は生まれてからまだ数ヶ月、体力もなく疲労も溜まり弱っていた。

 道の端で弱り果てた子猫に興味を持つ人間は更に減った。


 瞼を閉じていよいよ命の灯火が消えようとした子猫の頭に何かが触れる。気力を絞り目を開けると目の前に犬がいた。

 犬は子猫の頭を鼻先で優しくツンツン突いてくる。鬱陶しいと思いながら睨みつけていると犬の後ろからぬっと人間が現れた。


「ポチ?どうした?」

「クゥン」

「あ?猫?」


 この日子猫はとうとう運命の人間に出会ったのだ。

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