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10.急展開

 

 畑に戻るとタナカさん(夫婦)は既に四列の畝を作り上げていた。昨日耕した面積を考えるとあと一畝作れば終わりである。


「相変わらずタナカさん(夫婦)早いな。これ手伝う必要ないかな」

「カタカタ」


 イアンの言葉に大丈夫と言い、後を任せイアン達はタマの元へ向かうことにした。

 タマはしゃがんで一匹黄昏てプチっプチと草を抜いていた。


「タマー、捗ってるか?手伝いに来たぞ」


 そう言ってタマの傍らにしゃがみ込む。タマはもじもじしながらイアンを見つめる。


「にゃ…ご主人、もう怒ってにゃいですか?」

「怒ってない。と言うかお前の寝相の悪さなんてずっと前から酷いだろ。まぁ今回は横っ腹にクリーンヒットしたから流石にイラってしたな」


 そう言いながら草をとり始める。

 イアン達はやる事が多く、休憩時間は絶対確保したいので基本草むしりは暇な時にしかやらない。しかも大雑把に。


 今回はタマへの罰とここに植えてある薬でよく使われる火花が養分を多く必要とする為、少しでも雑草に養分を取られないように抜く作業を割り当てている。


 タマはイアンの言葉にホッとして先程より張り切って草むしりを始める。

 間違って火花を抜こうとするタマを注意しながらひたすらに抜き、畝作りを終えたタナカさん(夫婦)も参加して昼までかけて火花の周りの草を取り終えた。


「あー…腰いてぇ」

「にゃぁ…」


 腰を屈めてずっと作業していたイアンは固まっていた腰を痛みに呻きながら伸ばす。


 よろよろと家に戻ると机に皿に切られたパンが置いてあり、先に帰っていたタナカさん(妻)がチーズを軽く炙っている途中だった。

 今日の昼は軽くライ麦パンのみ。そのパンの上に先程の炙って溶けたチーズを乗せる。


 熱々のチーズに気をつけながらイアンは思いっきりかぶりつく。少しパンを引くと、とろ〜りと伸びるチーズが下に落そうになり慌てて二口目を口に運ぶ。


 熱かったがそのままの勢いでパンを食べきってしまう。だが、まだ物足りないと感じたイアンはいそいそと台所にあるパンを切りにいく。

 それを見ていたタナカさん(妻)はもう一つチーズを溶かそうと席を立った。


「にゃー⁉︎」

「んぐ⁉︎な、なんだ⁉︎」


 タマはイアンの隣で朝と同じように魚をパンに挟んで食べており、イアンのおかわり姿に触発されおかわりしようとタマ専用の魚保存箱を開けに行く。


 昔は食卓に並んだ一匹では足りないとイアンが食べていた魚を横から奪い取る程タマの魚好きはイアンに迷惑かけてきた。

 なので最初の一匹以外のおかわり分は自分で釣ったものしか食べさせていなかった。


 箱を開け、悲鳴を上げたタマになんだとみんながタマを見る。

 タマはプルプルと震えながらイアンを見つめ、涙目になりながらイアンの足に縋り付く。


「魚が、魚がぁ‼︎」

「魚?」

「カタカタ」


 タナカさん(夫)がタマの専用の箱をイアンの前に持ってきて中を見せると干された魚が二匹ポツンと置かれていた。

 どうやら無意識食べていて、ここまで減っている事に気づいていなかったらしい。


「おま、早目に言えって前も言っただろうが!」

「知らなかったですにゃ!」

「はぁ…とりあえず、タマおかわりは我慢しろ」

「にゃ⁉︎」


 ガーンとショックを受けているタマを慰めるようにポチがペロペロと頬を舐める。

 イアンは台所の隣にある食糧庫の中に入って魚がストックされているところを見た。こちらも少な目にはなっているがまだ五日分毎食出て間に合うくらいはある。ただタマにとっては少ないが。


「俺は平気だけどタマの状況を考えると早く魚は必要だな…仕方ないな」


 食糧庫を出るとポロポロ泣いているタマの頭ぐしゃぐしゃに撫でてみんなに指示を出す。


「みんな、急で悪いけど朝一に海に行く。タナカさん(夫婦)は二日分の食糧と宿泊の用意頼む。ポチはコッコ達に説明と二日分の遊び相手になってきてくれ。それと、タマ」

「にゃ…」

「今回はお前の為に行くようなもんだ。他のみんなの分の畑仕事してこい」

「にゃ!」


 勢いよく頷いて外に向かって走って行く。後を追うようにポチも駆け出し、イアンは残っていたパンを口に放り込むと作業台に向かう。


「よし、やるか」


 そう言って一つの箱を取り出し開けると練り餌用の材料が一式入っている。

 本当は町に行けば直ぐに種類によっては安価で魚が手に入るがそれでも町に近付きたくないイアンは海や川に釣りへ行く。


 料理はあまり得意では無いが薬の調合みたいなものだと思いながらイアンは箱に入っていた本と道具と材料を机に広げる。


「えーと…海老の殻を粉状になるまで砕く」


 すり鉢に海老の殻を投入、すりこぎでガツガツと砕き、ゴリゴリとすり潰していく。

 この餌は生き餌を取るようにと撒き餌代わりだ。現地の磯部などにいる生き餌を調達しての釣りも考えているが取れない事態もあるので保険がわりでもある。


「ここに小麦粉を入れる…砂糖…にんにく」


 ぶつぶつ呟きながら材料を一通り混ぜ終え、水は向こうで加える事にしてとりあえず完成した。小さな箱に餌と水、前から使っている木の擬似餌をしまう。


「よし、完成」


 餌の箱を持ってイアンはタナカさん(夫婦)のところへ向かう。

 タナカさん(夫婦)は倉庫から宿泊用品をバッグに詰めている途中だった。イアンは近くにいたタナカさん(夫)に箱を渡して畑へと向かった。


 ポチがコッコ達と追いかけっこをしているのを隅に見ながら畑に植えてあるものを確認しておく。急の出発でしっかり見る時間が無く、水切れで枯れるかもしれないと思いながら一通り見る。


「あー…これ、持つかな…うわぁ、これ明日収穫だといいのになぁ」


 一通り確認を終える頃には日が傾き、コッコ達の餌と水を一応多めに入れてから家へと戻る。

 いつもより早めに食べ、朝が早いのでタマとポチを連れて自室に戻り明日に備えて就寝した。

釣りはそこまで詳しくはありません。

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