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第2話 シュンの得た加護

  え? どうしよ? 早々に詰み?


「えーと、あの、そのですね……。」


 心の中を掻きむしるような焦燥感が俺を襲う。やばいやばいやばい! どうすればこの窮地から逃れられる?


「なるほど、身分証明書を失くしたのか?」


 しめた!これに乗っかればも万一にも捕まることは無い!!


「はい。残念ながら失くしてしまいました…。」


 流石にタメ口はやめておいた。兵士を怒らせる訳には行かないからな…。


「そうか、じゃあギルドに行って再発行しないとだな。ほれ、行くぞ。」


 甘くね?こんなんで入れるのかよ…。


こうして街に入ることが出来た俺は兵士とちょっとした自己紹介をした後、ギルドまで歩き始めた。兵士の名は ガーク と言うらしい。


「名前を知り合ったばかりで悪いが、その奇抜な格好はなんだ?」


 ん?格好……? パジャマーーー! 俺の格好、今、パジャマーーー! やべぇ、恥ずかし!


「最近のファッションってやつですよ……?」


 恐ろしく完璧な返答。俺でなきゃ見逃しちゃうね。


「なんで疑問形なんだ……? まあいい。あぁ、そうだ。お前、街の周りの平原で青色のスライムのような生物を見なかったか?」

「ああ、見ましたよ。」

「研究者が作った厄介なモンスターで倒したら……ん? 今なんて?」


 やらかしたぁー! しらを切るべきだったか!?


「お前今見たと言ったか!?」


 こればっかりは仕方ない。正直に話そう。


「はい……。」

「まさか、倒したりはしてないよな……?」


 兵士が少し声を震わせながら尋ねてきた。ああ、ほんとにやらかした。思いっきり踏みにじったよ、うん。


「もし、倒してたらどうなってたんですか……?」


 俺は倒した事がバレないよう出来るだけ冷静さを保ち、問い掛けた。


「それはな……。一切の攻撃系統の魔法が使えなくなるんだ。」

「はっ!? 嘘……だろ?」


 脳が一瞬この言葉の意味を理解するのを拒否した。これが本当ならば俺は魔法で無双するという夢が叶わないことになる。魔法がこの世界にあるというのは喜ばしいことなのだが素直に喜べない自分がいる。


「嘘ではない。もう一度聞くが倒していないよな?」

「はい。倒していません……。」


 ショックで頭が混乱してしまったのか、プライドのせいなのか分からないが咄嗟に嘘をついた。

 くっそぉ……。研究者に賠償金求められるだろこれ。


 この話の後はガークに時給の高いバイトなどを教えてもらった。これで金策はどうにかなりそうだ。俺も一端の日本人。路地裏で寝るのはどうしても避けたいのだ。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



「ほれ、着いたぞ。」


 門に入ってから二十分くらい経っただろうか。ギルドに着いたようだ。ギルドは大きな木造建築の建物で、こうして見てる間にも扉から人がたくさん出入りしている。ガークが中に入っていったので続いて俺も中に入っていった。


「おおーー!」


 ギルドには机でビールのジョッキをもって乾杯している人や壁に貼られているクエストの紙を確認している人、剣の手入れをしている人など、色々な人が居た。そしてギルドはパーティ会場のような盛り上がりを見せており、スライムを倒してしまったことなど忘れてしまうほどだった。


「盛り上がってるところ悪いが早く行くぞ?」

「ああ、すまん。」


 ギルドの奥にある受付に、迷いの無い足どりで進んでいくガーク。俺はその後ろを意気揚々と歩いた。



 「受付のマリィです。御用件はなんでしょうか。」


 金色ロングヘアーで、青い瞳を持つ女性は淡々とした口調で要件を尋ねてきた。この女性、街中で歩いていたら全ての男性から注目を浴びるほどの美人なのではないだろうか。


「ああ、こいつが身分証明書を失くしたみたいでな。新しいのを発行してやってくれねぇか?」

「分かりました。では手続きを致しますのでこの水晶に手をかざして頂けますか?」


 とマリィは水晶に手を向けながら言う。美人ってほんと凄い。単純な受け答えをしているだけなのになにか凄いことをしているかのように見えてしまう。そんなことを思いながら俺は水晶に手をかざす。


「サトウ シュンさん、十六歳、犯罪経歴はなし。はい、大丈夫です。身分証明書を発行しますね。」


犯罪経歴まで分かるのかよ、すげぇな異世界。だから簡単に街の中に入れたのか。  


「知っているとは思うんですが、決まりですので一応説明させていただきます。身分証明書、通称ステータスカードには《名前》《年齢》《犯罪経歴》《職業》《レベル》《ステータス及びスキル》が記載されています。」


 おおーー! 職業!?  レベル!?  ステータスにスキル!? 異世界っぽくなってきたぁー!

 って、俺攻撃魔法使えないじゃん……。喜びの感情と悲しみの感情が混ざりあって複雑な気持ちだ……。


 「このカードでは、一般的に持ち主だけが《職業》《レベル》《ステータス》の欄を見ることができ、第三者はその欄を見ることが出来ません。」


 凄いな……。この紙有能すぎだろ。


 「《職業》《レベル》《ステータス及びスキル》の説明はこの紙に記載してありますので、身分証明書といっしょに渡しておきます。」


 マリィが微笑みながら俺に一枚の紙と、免許証ぐらいの大きさのステータスカードを渡してくる。天使ですか?


 その後俺はガークと別れ、すぐ近くにあった席に座った。いち早く説明を読みたかったのだ。

 その紙にはこう書かれていた。


 《職業》は神から生を預かった時から決まっており変更は出来ない。多数の職業が存在し、様々な恩恵がある。例 魔道士の場合、使える魔法が多く、消費MPが少ない。


 《レベル》はモンスター、魔素を持った生物を倒すことにより上げることができ、《ステータス》が向上する。


 《ステータス》は《力》《俊敏》《防御》《賢さ》《運》《MP》の能力を数値化したもので成人男性の平均能力値が百である。


 《スキル》は使える魔法や賜っている加護のことである。使える魔法はレベルを上げることによって増えていき、使い込むとその威力、効果は向上する。加護は殆どが産まれた時からもつものであり、便利な効果であることが多い。


 なるほど。まあ大体はRPGと同じ感じだな。さぁて、次はお待ちかね。ステータスとスキルの確認だ! 攻撃系統の魔法が使えないという情報が、嘘っぱちであることを祈るばかりだ。

深呼吸をした後、俺はステータスカードに目を移す。


【名前】サトウ シュン


【年齢】十六歳


【犯罪経歴】なし


【職業】剣士


【レベル】1


【ステータス】《力》74  《俊敏》82 《防御》76


       《賢さ》121 《運》48 《MP》50


【スキル】《魔法》



     《加護》スライムの加護:攻撃系統の魔法が使えなくなる。


     



 ステータスがほとんど平均以下!? それにマジで攻撃魔法使えないのかよ!?

分かっていたことだが、いざ実感するとなると辛いな。ステータスが平均以下なのも結構くるものがある。それに剣士……。ぱっとしない……。


「はぁ……。異世界転移者の落ちこぼれになったってことか……。」


 ギルドの天井を見上げながらそう、呟いた……。




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