◆◆第2話 Game 下◆◆
◆◆第2話 Game下◆◆
この彼らの乱闘には、意味がある。
化け鼠は、人間を“守る”使徒であり、
化け猫は、人間を“殺す”使徒なのだ。
2人とも、普段は人間の姿でいるより
元の動物の形で居る方が楽だが、
人に溶け込むために人の姿で居る。
そして勝った方には特典として
スキルのようなものが手に入る。
扱える技が、1つずつ増えるのだ。
最近化け猫は鼠を負かしてばかりいるので
使える技が増え続けていて、
鼠も困り果てていた。
「だいたい、このルールがおかしいんだよ」
「どうして?」
「ただでさえ負けているのにお前のスキルが増えたら、
もっと負けるじゃないか。どんどん勝てなくなる…」
「ああ〜」
化け猫が納得する。
「でも、一回でも勝てば僕のスキルの半分が手に入るのを
知っているでしょう?」
「…。」
青年が、苦虫を噛み潰したような顔で下を向く。
「もし勝てれば、僕より能力が上になるかもしれないよ?」
「…勝てなければ、意味がない。」
そういうと、青年は鼠の姿に戻り、男の子に背を向け、歩き出した。
「何処へ行くの?」
「家へ戻る!」
「君に家なんてあるの?」
男の子はぱっと身を翻すと、
猫の姿に戻り 帰って行った。
「…あ……まさか!?」
嫌な予感がした。
鼠は4本の足で急いで駆け出し、
自分の家に戻った。
家は、あった。
化け鼠は青年の姿になり、家の中に入った。
そして、キッチンから流れてくる
赤い液体に気づき、それを辿って行った。
妻は、冷たくなっていた。
「あ…ああ…なんて、ことを…!!!」
妻の顔はもう原型がなく、
辺りは血の海だった。
途方に暮れ、立ち尽くす青年を見て、
「ぷっ…きゃはははっ!!」
窓の傍にいた少年が、笑った。
青年は笑い声のする方へ、
顔も向けず 指の先を銃器に変えて、発砲した。
とっさ姿を変え銃弾をかわす化け猫。
「お前っ、この化け猫ぉっっ!!!!」
青い瞳を真っ赤に変え、
体中を凶器へ変形させる青年。
「そう…そうだよその顔だよ鼠ぃっ…♪」
化け猫は尻尾をナイフにして、
八重歯を鋭く尖らせる。
化け鼠も素早く鼠の姿になり、
尻尾を幾千もの針にして
猫に向かっていく。
「本当にお前は最悪な奴だな…!!!!」
「ご愁傷さま…君のワイフは殺される前、
何度も君の名前を呼んでいたよ…?」
「…っ!!」
鼠は猫の目に、力いっぱい針を突き刺した。
「ぎゃあああっ!!!!!」
化け猫はのたうちまわり、
息を荒げながら
「痛いよぉっ…」
目を押さえ、よろめきながら
壁の向こうに隠れて行った。
すかさず後を追う鼠。
「…あ?」
しかし、そこにはもう猫の姿はない。
「どこにっ!!どこに隠れた猫ぉっ!!!!」
シンと静まりかえった家の中で、
鼠は耳を研ぎ澄ませていた。
すると、
すぐ後ろから声がした。
「…ここだよ。」
「っが…」
猫は、壁に変形していて、
そこから無数の槍を出し
鼠の背中に、突き刺した。
鼠はその一瞬で即死したが、
猫は目を潰された恨みから
形がなくなるまで、
刺し続けていた。