◆◆第1話 Game 上◆◆
◆◆ 第1話 Game ◆◆
若い青年が居た。
青年は薄い、栗色の髪で、
瞳は青かった。
「行ってくるよ」
妻に朝の挨拶をして、
青年は仕事に出かけた。
「随分と格好良いのに化けてるじゃないか…探すのに、苦労したよ」
青年の後ろから、聞き覚えのある声がした。
「ああ、良く分かったね。お前もなかなかのルックスじゃないか…」
「はっ、止してくれよ」
そう笑ったのは、あの化け猫だった。
カラスに変形しているが、瞳は黄色がかっていて、
普通のそれではない。
「何の用だ?」
青年の姿の化け鼠が言う。
「また、いつもみたいに遊ぼうよ…」
カラスは羽を大きく羽ばたかせたかと思うと、
次の瞬間には小さな男の子になっていた。
茶髪の男の子の、にっと笑った口には
鋭い八重歯が見えた。
「今日は大人しくしといてくれよ、再生したばかりでつかれているのに」
「時間が掛るようになったのかい?」
男の子に聞かれて、青年は
「見るか?」
と聞き、
パチン、と懐中時計を開き、見せた。
9と12の間で、
秒針が行ったり来たりしている。
この時計は、この異形の2人にとって
《命の時計》
と呼ばれるものだった。
2人とも1つずつ持っていて、
この針の揺れが小さくなればなる程、
《再生》の速度が遅くなるのだ。
「振幅が3時間分しかないね?」
「ああ。このままだと数日どころか数ヶ月目覚めなくなっちまう。」
「早く僕に勝たなきゃ死んじゃうよ?」
「そうだな。殺させてくれるのか?」
「殺せるならどーぞ。」
そんな戯けた会話を乗せて、
冬の風は吹く。