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婚約者の言う事には  作者: 北見深
各々の回想
18/29

レオ  友人の婚約者 中

ドアと叩くとリサの声がした

「俺。レオ」

「あ、はい。何?」

レオだと名乗ると簡単に戸は開いて・・・。

だから、それは良くないと解ろう?

「ちょっと、挨拶。しとこうと思って」

「わざわざ?・・どうぞ」

とりあえず笑顔を取り繕い中に招き入れられた。

だから、入れたら駄目だって。絶賛心の声で突っ込み中。


リサはテーブルに二人分の夕食を並べていた。

「今日。来なかったんだな」

祝いの事と察して、呼ばれて無いのにと表情が告げている。

「ヨシュアには来るよう言ったのに。」

あ、という顔。ホント解りやすい。

「・・私。ひ、人ゴミ苦手だから。聞いてても断ったと思う」

眼が泳いでいる。律儀そうなリサなら呼べば一応来たと思うんだけれども。庇っているのだから言うまい。

「これ、あげるよ。卒業祝い」

ポケットに入れてきた箱を出す。女の子が好みそうな綺麗な箱に肌触りのいいリボンを掛けている。

「え。と。卒業したのは、れ、レオでは?」

人の名前を言うのに言いよどむ。高々名前を呼ぶのも恥ずかしそうだ。

本当に。大丈夫かな。

「だから、いままでのお礼」

「何もしてない、よ?」

「まあ、貰って。コレ。他の子にも配ってるから。俺の作った髪留め」

戸惑うリサの手を取りさっさと押し付けて・・・ふと、面白い事を考えた。

「付けて見る?」

え?と固まるリサ。レオの手は箱を握らせたリサの手をくるんだまま。

リサはヨシュアの家族とは親しげにしているが、他の人といた所を見たことが無い

話してみれば普通の女の子で、普通よりだいぶ引っ込み思案だ。


「つ、つける?」

「よし!後ろ向いて。」

え。え、と小さな声を上げるリサを無視して背中を押す。

手の中の小箱はテーブルに置いてリボンを解き上箱を開けた。

「・・・可愛い」

リサが小さな声で呟いた。

レオが開けた箱を覗いたのだ。

川べりにある小さな花々を模したティアラの様な形をした細工物。


「ちょっといじるね」

髪を手で梳けばびくりと肩が跳ねる。


そこは警戒出来るのになぁ。


常として持っているピンと括り紐を出し緩くリサの肩までの髪を結う。


「じっとしててよ」


レオの言葉に観念して本当にジッと大人しくなる。


だから、駄目だって。背を向けて無防備に大人しくなるとか、皆今日酒入ってるよ?危ないからな。


内心。つっこみつつ髪を整える。


ふと、目の端。視界に過った物体を伺えば、出入り口に隠れる様にしてクリスが居た


(睨まれてる?)


視線が合わぬ内に逸らして、レオはリサの仕上げにかかった。

「見ておいでよ」

レオがそういうと、リサは鏡の有るだろう場所に行こうとしてクリスが居るのに気付く。

「あ、・・待っ、直ぐ用意するね?」

引き返そうとしたリサにクリスは優しく声をかけた。

「いいから行っておいで、リサ。」

「でも。」

レオとクリスを交互に見てリサは逡巡する。

レオは笑顔でどうぞと手を延べる。

リサはクリスの夕食の準備が気になるらしい。

「・・レオ。って言った?ヨシュアの友達の。」

クリスがリサの肩を押して入れ替わりに入ってくる。

リサは押されるまま外に出て、そのまま向かったようだ。鏡のある部屋は家族共用の浴室前ぐらいしかないだろうからリサの足音は駆けていた。

「祝いの席を抜けて良かった?」

クリスが笑顔で聞いてくる。だのに、ピリピリとした空気が一瞬で張りつめるとは之如何に。

「ああ、そうですね~、別に卒業者は俺だけじゃないんで。構いません。」

「そうか。・・卒業おめでとう。君は就職なんだろう?都の方で修行するって聞いたよ。」

「えぇ・・・そうです。良く知ってますね?」

「ヨシュアと母さんが」

うん、お喋りな人達だ。隠しては居ないが引き籠り気味なこの人にまで知られていたとは。

「俺は女性相手の装飾関係の仕事をするんで、出る前に仲の良い子にはちょっと何か贈ろうかと思って、って、リサだけじゃなくて他にも贈ってますよ?」

何故か言い訳してしまう。レオが「仲が良い」と言ったとたんに室温が下がった気がしたからだ。実は贈り物は母と姉、叔母と親戚にしか渡していない。他の女の子に渡すと誤解されそうだからとか、リサには失礼だが彼女はそういう方面は鈍そうなので。

「そうなんだ。でも。夜に女の子の家を訪ねるのはいただけないかな。」

今家には親も居ないしね、と釘を刺される。クリスも年頃の少女と二人きりなのだが言いにくい空気を彼は纏っている。

「いや、俺明日には出るので、今日しかありませんでしたから、それに見送りの場で皆が居る前で渡すの・・・変、でしょう?」

バシバシ牽制されるので、悪戯心がわく


「見送るとは限らないしね」

「そうか~、じゃあ、今日誘ってみます。ありがとうございますクリスさん」


北風が身に染みるなぁ。

視線を逸らして寒さを紛らわす。早く帰ってこないかなリサ。

「リサはヨシュアの婚約者だよ。」

「・・・知ってます」

また見合ってしまった。

「変な気を起こさないように」

「変なって?ああ!俺がリサに横恋慕してるって意味ですか?まさか、そんなこと考えてもないですよ?」

ははは、と笑って見せる。どっちが横恋慕したいんだろうなぁ

眉間に皺を寄せたクリスは珍しい。外では無表情な人だから。

ちなみに、笑顔は希少であんまり見せないと評判だ。

「でも。」

面白いのでいつもの悪ふざけがでてしまう。

「リサが心変わりをする分にはいいんじゃないですか?」

ここ、満面の笑顔で言う。


目を見開いたクリスは固まった。

次第にその表情が険しくなる。

おおっ!

マジ怖いぞ。


「リサはそんな子じゃない。」

いやいや、あんたね

「ヨシュアとリサは兄妹みたいなもんでしょう?俺も一緒に遊んだりしてたけど、色恋とは程遠い会話しかしてませんよ?」

と、言ったらクリスの表情が和らいだ。駄目じゃないかな。あからさまにほっとするの。

「だから、俺に惚れるのもアリ・・・かも・・よ?」

クリスに睨まれた。

「彼女はそんな気の多い子じゃない」

名ばかりとはいえ婚約者が居る状態で他に心移りはしない。と

「だいたい。君は余所に行くのにリサを惑わそうとか考えてるのか?」

「や、それを言うならあんたも都に行くんでしょう・っと」

口が滑った。公然のだが決定するまではそう言う事は言うべきではない。


「君には関係ない。」

「はい、すいません。」


素直に謝ってみるが二人して突っ立ったまま無言になった。


気まずい沈黙の中、小さな足音はその場の空気を温かく溶かした



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