レオ 友人の婚約者 上
レオは母と姉とで暮らしていた。女性の多い家系で育ったせいか、男だからとかって威張ることは無い。
姉の宿題を(女性だけに課せられる)手伝ったりしていたため細かい作業に器用にもなった。
姉が嫁ぐと言う事を切っ掛けに将来装飾関係の仕事に就こうと漠然とは思っていた。
弟子になるのは早い方が良いのは知っていたが、母を残していくのを少し躊躇っていた。
母は一人でもやっていける人だったが、弟子ともなると王都に出る可能性が高い。
このまま町で仕事を探すか?伝手を頼って弟子入りか。どうしようかとぐずぐず心の中では悩んでいた。
そんな時。
俺の手慰み程度の花冠を見た彼女の、素直な賞賛の瞳を見た。
嬉しそうに笑うその顔を見て、レオは弟子に入る事を決心した。
前々から、人当たりの良いレオは女の子相手に髪をいじったり、飾りを作ってやったりしていたが、年の割には幼い媚びることないリサの無邪気な笑顔は、レオに純粋に作品に対する賞賛だと思わせてくれて嬉しかった。
あやふやだった目標はシッカリと色を付けた。
姉の夫の紹介で、貴族相手にも商売をしている有名な店に修行に行くことになった。
レオは特に髪型とその髪を飾る品物作りをやりたいと思っている。
卒業したら、王都。決まった進路に先生も心配しつつも賛成してくれた。
◆◆◆
無事卒業が決まり、周りも慌ただしくなった。
家の机に向い石版にチョークでデザインを描いていく。お別れを前に、初心を思い出させてくれた彼女に何か贈ってやろうと考えている。
リサの顔を思い出しながら色は何を?とか形と合わせはって考えるのは楽しい。
リサはどこにでもよくいる色合いをしている。服装も地味な事が多いから埋没しがち。
黙々と作業するレオは外見だけは一人前の職人だ。
◆◆◆
卒業と修行の為町を離れるレオを祝ってくれる友人達。学校が卒業生に行事用の館を開放して祝いの場を設けてくれる。大講堂は全員で開会をし、後は各自友人たちと示し合わせて別の階の会場に行ったり、そのまま残ったり。
レオは友人たちが纏めている部屋に足を踏み入れて、彼に声をかける。
「ヨシュア。」
「おお!」
ヨシュアは既にちょっと出来上がっている。
子供用の弱い酒(この辺りの冬は厳しい為10を過ぎた子は少しばかり飲んでもいい事になっている。)雰囲気に酔った所もあるのか顔が赤い
「リサは?」
彼女も呼んでいた筈だった。ヨシュア経由で
「リサ?家に居るぞ。」
「来ないって?」
ヨシュアが考える様に黙る。
「・・・忘れてた。言ってない。」
「じゃあリサは家か」
「ん?俺んち。」
「一人で?」
今日は祝いがあらゆる家で行われ、ヨシュアの家の母親も駆り出されていて、しかもリサの店は開けてある。
ヨシュアのオジサンと長兄は仕事で遠出してた筈だ。ヨシュアが居て、女の子ひとりにするとは思ってないから安心しての放置だろうに。
「リサ一人なのか?」
ヨシュアは何言ってんだろうって感じで事も無げに笑う。
「んなわけねえじゃん。クリスが居るから二人だって」
「え・・」
それは、どうなんだ?家族同然とはいえ微妙じゃないかと思う。ため息をついて、彼から離れる。
他の卒業生もいて、大人数だからひと時抜けても構わないだろう。
ポケットの箱を握り確かめるとそっと宴を抜け出した。