写楽のミカタ!
ここまで写楽の真作と複数のニセモノについて〈第2期〉の作品を中心に具体的な根拠をあげながら、さまざまな角度から実証してきました。
ほんらいであれば〈第3~4期〉のニセモノの詳細な分類とエセ写楽の人数を特定すべきかもしれませんが、もはやそれは専門家のしごとであり、インターネットでの「たのしい美術よみもの」としても、すでに長すぎるので擱筆します。
さいごに個人的な感想をひとつだけ。
〈第3~4期〉の役者絵はすべてニセモノであるとのべましたが、ニセモノのなかにも好きな作品があります。〈第3期〉『三代目沢村宗十郎の孔雀三郎』です。
写楽の構図ではなく、眉や耳のえがきかたをみてもニセモノであることはわかりますが、赤子をだいて立つすがたがシャンとしていて、じつによいと思います。
ニセモノをあきらかにすることは、ニセモノを弾劾することではありません。まちがっても「ニセモノだからみる価値はありません」と云っているわけではありません。
わたしがおこなったのはニセモノの「否定」ではなく、あくまで真作とニセモノを「区別」することです。作品の評価とはべつのはなしです。
〈第2~4期〉のニセモノのなかから、北斎のえがいた作品をさらに特定すれば、北斎の画風の変遷を知る上でのきちょうな資料にもなりますし「勝川ヨリメ氏」や「カクザイ氏」のニセモノを研究することで、北斎いがいの著明な浮世絵師の前歴があきらかとなるかのうせいもあります。
写楽のニセモノから、さらにゆたかな江戸絵画(浮世絵)史がみえてくるのかもしれないのです。
そして、わたしが真作と判じた写楽作品をあらためてならべてみていただきたいとおもいます。
ますます、写楽芸術の真髄が胸にせまってくるはずです。
〈おわり〉[2006.10.04(2017.08.23増補改訂)]




