写楽と7人のエセ写楽たち!?〈2〉
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〈第2期〉8月分の河原崎座と桐座をえがいた大判4枚・細判17枚のうち、写楽の真作は大判2枚と細判4枚です。
『三代目坂東彦三郎の帯屋長右衛門と四代目岩井半四郎の信濃屋お半』(大判)
『四代目松本幸四郎の新口村孫右衛門と中山富三郎の梅川』(大判)
『二代目小佐川常世の長右衛門・女房おきぬ』(細判)
『松本米三郎の仲居おつゆ』(細判)
『中島和田右衛門の丹波屋蜂右衛門』(細判)
『中島勘蔵の馬子寝言の長蔵』(細判)
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『中山富三郎の義興・妻つくば御前』(細判)も『二代目市川高麗蔵の亀屋忠兵衛と中山富三郎の梅川』(大判)から反転トレースしています。これも完全に顔が一致しました[図2参照]。
さすがに全身をトレースしてはいませんが、反転させたポーズをほぼそのままマネしています。この作品をえがいたエセ写楽は、前述した反転トレースの『四代目松本幸四郎の新口村孫右衛門』(細判)もえがいています[図1参照]。
さいしょに写楽絵をトレースした〈スケル氏〉の作品からは浮世絵師としての気概がかんじられましたが、この2枚をえがいたエセ写楽はポーズもほぼ丸パクリの上に耳たぶをえがきわすれるなど、かなり創造性に欠けるレベルのひくい絵師です。この反転トレーサーを〈スケルゲ氏〉とよんでおきます。
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〈第2期〉河原崎座8月分の『市川鰕蔵のらんみゃくの吉』と『岩井喜代太郎の二見屋・娘お袖』〈第2期〉桐座8月分の『二代目中村粂太郎の由良兵庫之介妻 みなと』をえがいたのは〈勝川ヨリメ氏〉です。
『市川鰕蔵のらんみゃくの吉』はヨリ目で耳たぶがえがかれていませんし、立ちすがたのバランスもよくありません。鼻の線が鼻の穴の下までつづいているえがきかたもちがいます。
『二代目中村粂太郎の由良兵庫之介妻 みなと』もヨリ目で鼻のえがきかたがちがいますし、手の表情がとぼしいです。写楽本人のえがいた〈第2期〉細判の女形はなにかもたせていたり子どもをかかえていたり、こまやかにえがかれています。




