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写楽を写す! 楽するエセ写楽!?〈1〉

     1



 写楽絵〈第2期〉にニセモノがまざっている決定的な証拠(しょうこ)があります。


 写楽絵〈第2期〉にえがかれた細判のいくつかは、大判の役者絵をトレース(うつしがき)した上で手をくわえているからです。


 こだわりのつよい本物の写楽がそんなことをするとはおもえませんし、そもそもじぶんの作品をトレースする意味がありません。かえって手間がかかると云うものです。


 たとえば〈第2期〉7月にえがかれた『三代目大谷広次の(やっこ) 土佐又平』(細判)は『嵐龍蔵の(やっこ) 浮世又平と三代目大谷広次の(やっこ) 土佐又平』(大判)をトレース(うつしがき)した上で手をくわえています。


 ためしに『東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく) 原寸大全作品』(小学館)から2枚の画像をパソコンにとりこんでかさねてみたところ、目鼻の位置は完璧に一致し、顔ぜんたいもほぼかさなりました[図1参照]。


 角度をかえると、右ひじからうでのラインまで一致します[図2参照]。大判をずらしてトレースしたことはあきらかです。


 一方『嵐龍蔵の(やっこ) 浮世又平』(細判)も顔をかさねてみたところ、目鼻とあごのラインが完全に一致しました[図3参照]。


挿絵(By みてみん)


 頭や髪のラインがずれているのは、ぜんぶトレースしてしまうと、トレースしたことがバレやすくなるため、あえて手をくわえているのです。


 さらに云うと『嵐龍蔵の(やっこ) 浮世又平と三代目大谷広次の(やっこ) 土佐又平』(大判)をお手本に『三代目大谷広次の(やっこ) 土佐又平』と『嵐龍蔵の(やっこ) 浮世又平』をえがいたエセ写楽は同一人物とみてまちがいありません。


〈第2期〉細判の刀の(つか)のえがきかたがこの2枚だけおなじだからです(刀の(つか)留具(とめぐ)装飾(そうしょく)的なものになっています)。


 ただし『嵐龍蔵の(やっこ) 浮世又平と三代目大谷広次の(やっこ) 土佐又平』(大判)をえがいたのも写楽ではありません。エセ写楽(代作者)のえがいたニセモノをトレースしているのです。



     2



 大判の作品をトレースして手をくわえたニセモノは、ほかにもあります。


 ただ、前述したトレース作品よりもいささか手がこんでいるのは、図版を反転させた上でトレースしていることです。


〈第2期〉7月にえがかれた『三代目坂田半五郎の子育て観音坊』(細判)は『三代目市川八百蔵(やおぞう)の不破伴左衛門と三代目坂田半五郎の子育て観音坊』(大判)から顔を反転トレースしています[図4参照]。


挿絵(By みてみん)


 おなじ役どころの大判できちんとえがきこまれている上下のくちびるが1本線でぬりつぶされている点も杜撰(ずさん)です。それいがいの細判でくちびるがえがかれるべき作品は、どんなにほそくてもきちんとえがかれています。


 ただし『三代目市川八百蔵(やおぞう)の不破伴左衛門と三代目坂田半五郎の子育て観音坊』(大判)をえがいたのも本物の写楽ではありません。

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