表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/29

世界でいちばんなぞの絵師!?〈1〉

※ この文章は、かつて〈よのすけ〉名義で2006年10月4日にWebサイト『水羊亭画廊』に掲載したものを大幅に加筆訂正したものです。

【1】世界でいちばんなぞの絵師!?


     1



「もんだいです。有名な浮世絵師を4人おこたえください」


 そうきかれれば、日本美術にあまりきょうみのない人でも「歌麿、北斎、広重、写楽」くらいはこたえられるでしょう。


 浮世絵界の「BIG4」にその名をつらねる東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)ですが、じつのところ、写楽の浮世絵師としての活動期間は1年もありませんでした。


 世界的な巨匠とよばれる画家のなかでも、写楽ほど活動期間のみじかい画家はほかにいません。


 写楽は寛政6~7[1794~95]年のおよそ10ヶ月のあいだに約150枚のインパクトにとんだ浮世絵版画(おもに歌舞伎の役者絵)をのこして忽然(こつぜん)とすがたをけしました。


 それ以前の作品もなければ、それ以後の作品も一切ありません(「写楽画」と云う落款(らっかん)扇面画(せんめんが)など数点があるものの、いずれも真贋(しんがん)不明)。


 記念切手や美術の教科書でもおなじみの東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)は、世界でもっともなぞにみちた浮世絵師なのです。



     2



「歌舞伎役者の似顔(にがお)(うつ)せしが、あまりに(しん)(えが)かんとて、あらぬさまにかきなせしかハ、長く世に(おこなわ)れず、一両年にて()む」(『浮世絵類考』)


 浮世絵師のプロフィールをまとめた『浮世絵類考』にそうかかれているように、写楽はたくみなデフォルメできわめて「写実的」な役者の似顔絵をえがました。


 うつくしさが信条の女形(おんながた)ですら「じつはオッサン」とわかるようにえがかれてはたまったものではありません。


「しかしながら筆力(ひつりょく)雅趣(がしゅ)ありて(しょう)すべし」と『浮世絵類考・加藤玄亀(げんき)曳尾庵(えいびあん))本』へかきしるされたように、写楽絵の評価は賛否両論ありました。


 斬新で強烈な個性ゆえに、写楽は「オンリーワン」としての評価を確立していたものの、その異質さゆえに「一流の浮世絵師」とみとめられていたわけではありません。


 そんな写楽が「一流の浮世絵師」としていっぱんにひろく評価されるようになるのは、明治10[1910]年いこうのことです。


 ドイツ人のユリウス・クルトがかいた『SHARAKU』と云う本の評価をうけて、日本でもたかく評価されるようになりました。それまであまり注目されてこなかった日本の芸術家が、海外での高評価をうけて、日本でも再評価されることはめずらしくありません。


 東洲斎写楽(とうしゅうさいしゃらく)の正体は長いことかくされていました。写楽の氏素性(うじすじょう)についてはじめてかきしるされたのは文政4[1821]年以降。写楽がすがたをけしてから、なんと26年後のことです。


 まず式亭三馬が「江戸八丁堀ニ(じゅう)ス(江戸八丁堀にすんでいた)」とかきました。


 そして『浮世絵類考・達磨屋伍一(だるまやごいち)本』では「写楽は阿洲侯(あしゅうこう)の士にて俗称を斎藤十郎兵衛(さいとうじゅうろうべえ)といふよし栄松斎長喜(えいしょうさいちょうき)老人の話那()り(写楽は阿波藩(あわはん)の士分で名前は斎藤十郎兵衛(さいとうじゅうろうべえ)だと栄松斎長喜(えいしょうさいちょうき)老人がはなしていました)」としょうかいされています。


 栄松斎長喜(えいしょうさいちょうき)は美人画をとくいとした高名な浮世絵師です。かれの美人画のなかに写楽絵のうちわがえがきこまれている作品のあることや、写楽を意識したとおもわれる役者絵のあることでも知られています。そんな栄松斎長喜のコメントが事実であれば、信ぴょうせいはたかいと云えるでしょう。


 また、このことがかきしるされたのは、斎藤十郎兵衛(さいとうじゅうろうべえ)が亡くなったとされる文政3[1820]年の1年後です。そうぞうをたくましくすれば、斎藤十郎兵衛(さいとうじゅうろうべえ)()があけるのをまって、かきしるされたとかんがえられます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ