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異世界で陣取りゲーム  作者: 三条水月
1/1

その日は突然やって来た

 皆さんは神と言う存在をどこまで、信じているだろうか?

 熱心な信者さんなど以外、その他大勢は、ようは心の持ちようであったり、と思っている人が多いのではないだろうか。

 勿論俺も、例に漏れずその他大勢であったのだが、ある事情によりその認識を改めることとなるのである。


「…はあ…、なんでこうなったのかね…」


  そうぼやくのは、加賀一清その人である。


「真面目にやって来たからよ?」


 その背後から声をかける着物を着た幼女がいた。

 

「なんで、アンタがそのネタ知ってんだよ…?てか、ビミョーに古いし」

「まあ、どうでもいいや。はあ……」


 そんな繰り返されるため息とともに遡ること数時間。


 ーーーーーーーーーー


 その日は、とても空気が澄んでいる朝だった。一清の朝は近所の神社までランニングするところから始まる。


 まあ、これだけ聞くと体力作りに励む活発的な人間に思えるかも知れないが、この男を一言で表す言葉は悲しいことに“引きこもり”である。


  この加賀一清という少年は高校に入ってから一ヶ月で不登校になり、それから一年半ほどたとうとしているが、今現在も引きこもりを本職にしている高校二年生である。


 だが、これだけ聞くと、

「あれ?こいつ、学校行ってないのになんで進級できてんの?」

 という疑問が浮かんで来ると思う。


  この少年実は、進級に必要な出席日数と、テストの日だけは学校に来るのである。

  テストの日だけ学校に来てサラッとテストを受けて、サラッといい点だけ取っていくものなので、とても嫌味な話なのだった。


 一清は、


「学校の授業なんて分からない奴が受けるものであって、そもそもどうして高校の内容程度でただ偉そうぶっているだけの教師どもに教えをこわにゃならんのだ」


 という、何とも今時の教師が聞いたら激怒しそうな考えの持ち主であった。


  元々一清は、何かを“知る”“学ぶ”と言う知識欲が人一倍強かったために、小学六年生の時には高校の内容ぐらいはネットで調べて自身で学習済みであったのだ。


 だが、いまさら感があったのだが、何事も聞くだけは聞いておこう、と最初の数回は授業に出たのだが、悲しきかなこの学校には一清が聞く価値が有りと判断した授業が無かったのだった。


 なので、いじめられたら学校へ行きたくないとかそういう理由で引きこもっているのではないのであった。


 さて、前置きが長くなったがこの少年“引きこもり”ではあるが、普通の引きこもりで無いことがご理解頂けたと思う。


「学校には行かないが、毎日をただ、だらだらと過ごしはしない」


 という、何とも殊勝(?)な心がけを持って生活を送っているので、朝体力作りのためにランニングをしているのだった。


 ーーーーーーーーーー


 その日も、早朝目を覚ますと直ぐに布団から体を起こし、まず顔を洗い、それからジャージに着替えて軽く準備運動をこなして直ぐに走り出すところから始まった。


 いつもと同じ道を走っていき、いつもと同じぐらいの時間で、いつもの神社にたどり着いた。


 そして境内に入り、朝の清々しい空気を目一杯肺に取り込み、深呼吸をして息を整えると、耳に心地いい砂利を踏み鳴らしながら、いつものように参拝する。


 ズボンのポケットに入れた小銭入れから十円玉を取り出して、賽銭箱に放り込み、上についている鈴を鳴らしてから柏手を打ち、いつものように“何か面白い事が起きますように”と、神様に願い事をする。


 俺は、常日頃から人生オフラインなんてクソゲーだと思っている。

 “代わり映えのしない日常”そんなものに愛想を尽かしたのはいつからだっただろうか。などと珍しく過去に思いを巡らしながら目の前の賽銭箱を眺めていた。


 とまあ、ここまではいつも通りの流れだったのだが、今日は違っていた。


「そんなにクソゲーだと思うなら他の世界へ行くか?」


 と、聞かれたのだ。


 小さな、着物を着た幼女から。


「………」


「え…?何で黙るのそこで。」


「……………」


「いや待って、ちょっと待って、そこで黙らないで!!、私がいたたまれなくなるから、ホントに!!」


「…………………」


「いやぁぁぁぁぁあー」


 と、そんな風に神様(仮)ーこの時点ではーは、絶叫とともに、賽銭箱の上に登場したのだった。罰当たりな神(仮)である。


 何故俺が、神(仮)が登場してから一度も言葉を発しなかったかというと、正直なところ、


 うわっ、ベッタベタだな~


 と思ってしまったからである。もし本当にこのチッコイのが神だったとして。


 黙りながら俺は、おおぅ、マンガやアニメなんかで主人公をしている少年たちは、こんなのにホイホイついていっているのかと、妙な感慨を覚えていた。




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