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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第七章】遠距離中の近距離
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陽子という嵐

「え、この鍋って吹成くんが作ったの?すごーい。おいしーい」

陽子が泉の作ってくれた鍋に、舌鼓を打つ。


「ありがとうございます」

泉がそんな陽子に微笑んでみせる。


「ほら、春田も食べなよ?美味しいよ?」

お玉で取り皿によそいながら、陽子が言うと、


「…要らねぇ」

春田くんがそっぽを向いてそっけない態度で答える。



(き、気まずい…なんだこの空間は…ーーーー)


まさかこんな夜になるなんて、私は全く思っていなかった。

多分、泉も、そして春田くんも、この展開は想定外だったはずだ。


泉を紹介しろと家に押し掛けてきた陽子が、偶然出くわしたという春田くんを連れて、私の家にやってきたのだ。


昨日の今日なだけに、そして春田くんには先程メールで意味深な発言をされていただけに、私は戸惑いを隠せないでいた。



「あら?もうビール無いじゃん」

もともと私はビールは買い置きしないので、陽子は自分で買ってきた分が無くなると、不機嫌そうな声をあげた。


「ねぇ吹成くん、近くのコンビニまで付き合ってくれる?」

酔っぱらった陽子が、泉に声をかける。


「はぁ?ちょっと陽子…」

(泉じゃないでしょ、ここは春田くんを連れ出すべきでしょ?)

ヒトの彼氏を連れ出そうなんて、普通は考えないと思う。

さすが空気の読めない陽子だ。


「だってゆりは家主でしょう?それに、春田は吹成くんとは行かないだろうし。」

酔っぱらって舌ったらずなしゃべり方の陽子が、泉を指名した理由を話し出す。


(なぜ泉が買い出しに行くのは決定してるわけ?)


私が陽子の采配に不満を言おうと口を開きかけた時、


「というか、二人で話す時間も必要でしょ?あんたたち」

私と春田くんを見ながら陽子がそう言ったのに驚いて、私は口をつぐんだ。


(え…?)


「さ、行きましょうか吹成くん?」

泉を無理矢理連れて、陽子が玄関を出ていく。


パタン、と玄関の閉まる音が、やけに大きく響いた。

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