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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第六章】葛藤と格闘
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突然の辞令

「夏海さん、少しいいかな?」

定時になり帰ろうとしていた私を部長が引き留めた。


「?はい…」

急いで帰ろうとしていた私は、部長に逆らうこともできずに、とりあえず言われた通りに小会議室へ入る。


「実は木咲(きさき)さんが来月から産休に入るってことで、後任を夏海さんに頼もうということになって、ね」

同じ総務部の木咲さんが小会議室に居た。

そして、その理由を部長から聞かされた。


「え?私が…ですか?」

(どうして、私?)

私は突然の話に、混乱した。


「でも、私…海外人事の担当なんて…ーーーー」


「大丈夫!夏海さんなら出来るわよ」

木咲さんが明るく言った。木咲さんは今年38才のベテラン社員で、とにかく仕事の出来る人だった。

そんな木咲さんに言われても、私には不安しかない。


「それと、明日から異動してくる春田くんにも担当についてもらうから」


「えっ?」

(春田くんも?)

本人から総務部に配属とは聞いていたけど、まさか同じ業務を担当するなんて思ってもいなかった。


「二人で力を合わせて頑張ってね」



「…―――はい」

それが辞令ならば私は従うしかない。不安を抱えたまま、私は小会議室を出た。




「なんの話だったの?」

定時で帰ろうとしていたはずの陽子がフロアーに残っていた。


「異動…というか、業務内容の変更?」


「え、マジ?なんの仕事するの?」


「海外人事…」


「あぁ、木咲さん産休に入るからね」

陽子が全く驚かずにそう言ったので、私が逆に驚いてしまった。


「陽子、木咲さん妊娠してたの知ってたの?」


「そりゃ見れば分かるでしょ…って逆に知らなかったことがすごいわ」

呆れたような顔で、陽子が言う。


「まさか後任に選ばれるなんて…ーーー」

(木咲さんの仕事を、春田くんと分担するとはいえ、私にあの業務が務まるのだろうか…?)


「でも、春田も一緒なんでしょ?一人でこなせって訳じゃないんだし良かったじゃん。」


「そうだけど…」

「って、私とこんなのんびり話してて大丈夫?」


自信のない私に、陽子が席を立ちながら首をかしげた。


「え?」

「今日、彼氏がこっちに来るとか言ってなかった?」


「はっ!!」

(そうだ、泉が待ってるんだった!)

私は突然の辞令に戸惑うあまり、泉が今日こちらに来ることになっていたことをすっかり忘れていた。



「じゃあ、またね」

慌ただしく陽子に挨拶すると、走ってフロアーを出てエレベーターまで向かう。


(――――今日に限って…っ)

なかなか来ないエレベーターを待ち遠しく思いながら、

私は鞄から携帯電話を取り出す。


今日、泉に逢える。

今日から毎週、泉が会いに来てくれる。


「もしもし、今どこ?」

私は会社を出た瞬間、泉へと電話をかけた。


『会社の近くのカフェですよ。ゆりさん仕事、終わったんですか?』


泉ののんびりとした声が、私を癒してくれる。


「うん、ごめんね。今そっち行くから」


『はい。それでは僕も(ここ)を出ますね』


私は走ってカフェへと向かった。ちょうど店を出た泉に会えるように。



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