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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第六章】葛藤と格闘
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ゆりの男より手強い女(新城努目線 )

「あれ?珍しいね」


ゆりに完全にフラれたその日、残業に入る前に煙草を吸おうと営業部のフロアーの隅にある喫煙室へと入った俺は珍しい人が煙草を吸っていたので驚いた。


「陽子」


「どうも」

陽子は、俺が声をかけると素っ気なく挨拶を返した。


「新城さんとお話がしたくて、こんなところで待ち伏せしてたわけです」

フーッと口をすぼめて白い煙を吐き出し、煙草を揉み消すと、陽子が俺を見ながら無表情で言った。


「へぇ」

陽子は俺が嫌いらしい。そして、俺も陽子は苦手だ。

だいたい、後輩のくせに態度がでかい。ゆりとは大違いだ。


「“激励会”することになったそうで。」


「あぁ…」

(情報、早いな。さすがゆりの同期で親友…ーー)


「あの子、張り切ってましたよ」


「そうすることで、俺との関係を“会社の先輩後輩”に戻すつもりなんだろ?」


俺がごはん行こうと誘ったのは、もちろん“二人で”という意味だったのだが、うまくかわされたのか、“激励会”ということでゆりは快諾した。


「新城さん、自業自得です」


「そうだな。俺が気の迷いなんて起こさなけれ「春田が来月帰ってくるんですよ、本社に」」


俺の言い訳なんか聴く気はないとでもいうように、陽子が話題を変えてくる。全く、情け容赦ない。


「そう」

(“春田”…確かゆりと陽子の同期の…ーーー)

研修の時、チラッと見た覚えがある。なかなか使えそうな男だ。


「春田がずっとゆりのこと好きだったこと、知ってましたよね?」



「陽子、君は何が言いたいの?」

俺は陽子の話が全く見えなくて、つい苛立ってしまった。

さっきからの扱いが酷いことも手伝って、だが。


「もし、ゆりが今の彼と別れたとしても、貴方のところには戻りませんよ」

陽子がまっすぐに俺を見ながら、言う。

「と、意地悪を言いたかっただけですよ」


(こいつ…本当に性格悪いな…ーーー)


俺が少し眉をひそめると陽子が少しだけ口元に笑みを浮かべた。


「あ…知ってます?貴方の影響で吸い始めた煙草、あの子、あっさり辞めたんですよ」


「あぁ、そういえば」

(吸っているところ、全く見てないな)


付き合う前と同じでゆりから煙草の匂いが全くしなかったのを、俺は思い出した。


「今の彼が言ったそうですよ“似合わない”って」


煙草を持つ俺の指を見ながら、陽子が嬉しそうに言った。


「“彼には敵わない”って、ゆり、良い表情(かお)で言ってました」



「…―――君は本当に、ゆりが好きだね」

俺は皮肉っぽく煙草を吸いながら、そう言った。


「そうですね、少なくとも他の女に気の迷いを起こす男よりは」


陽子は鼻で笑うと、すぐにそう言い返してきた。


「これ以上邪魔しないでね、新城さん」


この女は、ゆりが相当好きらしい。

もしかしたら今付き合っている彼氏よりも、こいつの方が手強いのではないのか?


「ではまた“激励会”で――――…」

そう言いながら、陽子は喫煙室を出ていった。


(来るのかよ…ーーー)


俺は仕事に戻るまで、暫く不味い煙草をふかしていた。

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