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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第六章】葛藤と格闘
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自分の気持ち

遠距離なんて、簡単だと思ってた。

お互いが想い合ってさえいれば、距離なんて関係ないと思ってた。

なのに、ちょっとしたことで不安になる。

そして不安になると、無性に逢いたくなった。


だけど、“重い女”になんてなりたくないと思ってた。

(私のこの気持ちは、“重い”?“重くない”?)


私は泉に抱き締められたまま、彼の胸の中に身体を寄せた。


「僕に…―――逢いに来てくれたんですか?」


私は泉に嘘をついた。

出張だと、そのついでに寄っただけだと嘘をついた。

本当は逢いたくて…会社を早退してすぐに新幹線に飛び乗ったくせに…――――。




「ゆりさん、今日は日帰りですか?」

泉が私を抱き締めたまま訊ねる。


先程から大学の敷地内で、堂々と抱き合ってる私たちは当然ながら注目されていた。


「そうだけど。泉、とりあえず大学(ここ)出よう?」


「あ」

私の提案に、泉がやっと状況に気付いて私を放す。

そして優しい瞳で私を見つめて照れたように微笑んだ。


「そうですね」


泉の笑顔は、私に安心感をくれる。

(ずっと傍に居たい。泉の傍に居たい。)

帰りたくない、なんて…ーーーー社会人には無理な現実(はなし)

終電までに帰るつもりで、私は泉との限られた時間を大切にすごそうと思った。





「さっきの…見てました?」

大学を出て、泉の家に向かう途中で、泉がポツリと言った。



「え、あぁ…。」

泉が言う“さっきの”とは、女の子に告白されていたことだろうか?

女の子の表情は後ろからだったから見ていないけど、泉が冷たい目で彼女を見ていたのは遠くからでも分かった。


(なんの感情も…持っていないような瞳…。私には向けられたことのない眼差しだった…)


「泉ってモテるんだね、高校の時も凄かったけど」

私が茶化すように笑って言うと、


「妬いてくれたんですか?」

泉が私を見透かすように悪戯な笑みを浮かべて言う。


(嫉妬しなかったと言えば嘘になる…。だけど私は、それよりも…―――)

自分がいつか、泉にあの目で見つめられたらどうしようという不安だった。


恋に終わりはつきものだと、二度もフラれた私は学んでいるから…ーーー。

だからこの恋がいつか終わってしまったらと…不安で仕方ないんだ…ーーー。


「ゆりさん?」

私の暗い気持ちに気付かれないように、私は素っ気なく答えた。


「…別に?」


“本当はめちゃめちゃ嫉妬してた。

本当は泉に逢いたかったから来たの。”


そうやって、素直に言えたらいいのに…――――。


(素直に気持ちを伝えられるあの子の方が、自分よりよっぽど可愛いじゃない…。)


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