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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第四章】近距離な男
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ゆりと努

中途半端な気持ちにケリをつけるために、出掛けたはずなのに。

行きより帰りの道の方が、気持ちにモヤがかかっていた。

(何してるんだろう、私…ーーーーー)


――――傘を差しながら、水溜まりばかりの道を歩く。


水溜まりを避けて歩いているのに、水溜まりに足をとられ溺れているような、もがいているような気持ちだった。







『君が、夏海さん?』


もう恋愛はしないと決めていたのに、社内でも有名だった新城さんに初めて話し掛けられた時、不覚にもドキッとした。


――――…正直、一目惚れだった。

だけど、馴れ馴れしく声をかけてきた努は、きっと“軽い人”なんだと思った。



『俺と付き合わないか?』

だから、そう言われたとき私は迷った。

もう傷付きたくない、恋愛はしないと自分で決めたはずなのに、それでも彼に惹かれていたから…―――。


『ごめんなさい…』

そんな心に迷いがあったまま、私は彼の申し出を断った。


『どうして?』


『…私、自信がないんです』


『過去に一度、フラれたことがあって…――――』

私の不安を、彼は聞いてくれた。ただ、優しく聞いてくれた。


『これからもご飯とかたまに誘っても良いかな?』

努のそんな優しい気遣いがすごく嬉しかったのも、覚えている。

恋に慎重な私に合わせてくれる努が、すごく誠実で、大人にみえた。








家の前に着いて鍵を開けようとしていた時、携帯電話が鳴り私は我に帰る。

――――着信は、泉からだった。

鍵を開けてすぐに家に入り、通話ボタンを押す。


『もしもし、ゆりさん?』


「…うん」

耳元で、受話器越しの泉の声。


(会いたいよ…ーーー泉…。泉のぬくもりに包まれたいよ!私の迷いを打ち消してよ!)

そう言えたら、どんなに楽だろう。


だけど、言えるはずなかった。泉の気持ちを考えたら、言えるはずなかった。



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