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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第四章】近距離な男
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帰り道の選択

『ね、さっきの何だったの?』

隣の陽子から、社内チャットが送られてきた。

突然パソコンの画面に出てきたチャットの画面に、私はドキッとして陽子を見る。

陽子はどこかの部署からの電話応対をしながらこちらをチラリと見て、目で合図してくる。


ここでは聞き耳を立てている女子社員の先輩たちがいるから、チャットで返事をしろと言うことらしい。


『今日ごはん行こうって』

私はこそこそと文字を打ち込み、チャットを返す。


『え、別れたのに誘ってきたの?』


『うん。でも行かないよ』


『え、行かないの?』


『うん』

そこまでやり取りが続いたところで陽子が上司に雑用で呼ばれ席を立った。


(行かない…ーーーだって今さら努と会っても…)


私の中にあるのは、泉への後ろめたさ。

遠距離な彼には、今日私が彼とごはんに行っても気づかれることはない。

――――だけど、それでも…泉に黙って元彼と会うなんて…。


『不安なんです。―――好き過ぎて…』

(きっとまた、あの表情(かお)をさせてしまう…ーーー)

泉が私を泣きそうな瞳で見つめた時、心が苦しくなった。

泉を不安にさせたくない。だから行かない。




「それ、自分のためでもあるでしょー」

帰り際、陽子が言った言葉が胸にグサリと刺さった気がした。


「え?」


「遠距離の彼氏のためとか言って、ゆりはさ、まだ新城さんのことも好きだから二人で会うのが不安なんだよ!」


「好きじゃないって…」

(私はただ、泉が…ーーーー)

私は陽子の言葉を否定する。でもそれは…ーーーまるで、言い聞かせているようで、なんだか格好悪かった。


「じゃあごはんぐらい付き合ってあげたら?春田の時は二人で飲みにも行ってたんだし。何とも思ってないなら行けるでしょー」


「…―――でも、春田くんは同期だけど、新城さんは元彼だよ?さすがに何とも思ってなくても、彼は嫌がると思う…」


「じゃあ、聞いてみたら?」

否定的な態度な私を、なぜか陽子は気持ちを変えさせようとしてくる。


「え、(カレ)に?」


「そ、彼に!『元彼とごはん行っても良いかな?』って。『なんとも思ってないし、好きなのは貴方だけだからー』って」


「陽子…楽しんでない?」

イキイキと喋り続ける陽子に、私はジロッと睨んで言うと、


「あ、バレた?」

と、陽子はおどけて見せた。


(他人事(ヒトゴト)だと思って!もうっ!!)

「言わないし、行かない!…じゃあお疲れ様!!」

私は自宅へと向かう電車に乗るために駅へと向かって歩く。


「はーい、また明日ねーお疲れー」

陽子がクスクス笑いながら言った言葉を聞き流しながら、私は家へと帰ったのだった。





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