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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第一章】夏海ゆりの恋
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その理由

「なんで今日はそんなにナチュラルメイクなの?」


なんとか出勤時間に間に合ういつもの電車に乗れた私は、

身なりを犠牲にしていた。


いち早くそれに気づいたのは、同僚の陽子だった。


「…寝坊して」

私はため息混じりに答える。

(――――とりあえず、まだ眠い。休みたい。)


「マジか。それでその顔ってわけ」

納得したように陽子が私の顔を指差す。


「ひどい顔になってるわよ、せっかくの美人が」


(ひどい…やっぱり?)

鏡もろくに見ずに家を出てきたが、何となくひどいだろうなとは感じていた。

「―――昨日…彼氏と別れて、さ…」


「 マジか、やっぱ別れたかー」

陽子が真顔で言う。

昨日、彼に会う前になんとなく陽子にはそうなるだろうと話はしていた。


「で、夜通し泣いてその顔ってことね?」


「夜通し…ってわけじゃ…」

私は昨晩を思い出して、何となく否定してしまう。


「なに、違うの?」

陽子が不思議そうに尋ねる。


映画館で泣いたが、吹成が声をかけてきて…ーーー

結局、家までついてきて…ーー。


(泣くタイミングを失なった、というか…ーーーー。)


そういえば私は、泣くことを…忘れていた。


朝のミーティングが始まり、陽子との会話は一旦打ち切られた。





「は?高校の後輩?」

昼休み、陽子に偶然再会した吹成の話をすると、訳がわからないという反応が返ってきた。


「そう、地元から上京してきたらしくて」


「って、彼女とケンカして追い出されたからってよくゆりの所に泊めろだなんて言えるわね、仮にも男なのに」


(ですよねー…。でもそれが出来るのが吹成(あいつ)の特徴というか…ーーー)


「それ、絶対下心しかないでしょ!」

陽子は、他人事だからか何か期待するように楽しそうに言う。

私はすぐに首を横に振る。

「いや、それはないわ」


(吹成が下心みえみえの肉食男子なら私だって断った。でもそうしなかったのは、彼が“そういう人種”じゃないと知っていたから)


「え?それじゃ、マジで何もなかったの?」


「もちろん」


(あるわけがない。吹成は…ーー私の元彼である高岸太一の、親友だったのだから)



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