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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第四章】近距離な男
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大事な話

「夏海さん、ちょっと」

午後、総務のフロアーに新城努が現れた。

努は真っ直ぐに私のデスクまで来て声をかける。


「…はい?」

場所を変えよう、というように彼はフロアーから出ていく。

私は周りの女子社員の刺さるような視線を体中に受けながら、席を立ち、努の後ろをついて行く。




努はエレベーターに乗ると、「R」のボタンを押す。

そして私たちは屋上に着いたエレベーターを降りた。

オフィスの屋上は社員がお昼を食べたりできるようなテラス席がある。もちろんお昼休憩は終わっている今は、誰もいない。



「…あのさ、今朝のことだけど」

――――努が言いにくそうに口を開く。

そんな彼の背中をこっそり見つめながら、私は黙って後ろに立っていた。


「?」


「俺、神田さんとは別れるよ」

振り返った努が、私を見つめながら言う。


「――――…そう、ですか」

(なんでそれをわざわざ元カノに言う必要が?)

突然の発言に、私の心臓がドッドッと騒ぐ。


(それを言うために…ここに?)

あんなによく分かっていた彼のことが、今となっては全く分からない。


「俺、ゆりのこと凄く傷付けたよな…」

努が、風に靡く私の髪に触れようとした瞬間、私は身体を強張らせた。


「…―――」

ドキドキと心臓が高鳴るのを、私は胸を抑えて否定する。

(違う、私は…もう努のことは好きじゃない…ーーー私が好きなのは、泉なんだから…)

でも、そう意識すればするほど、顔に熱が集まってくる気がした…。


「今日一緒にごはん行こう?」

私は努の誘いに、黙って首を振る。

努は私の無言の返事に、困ったように苦笑した。

(そんな表情(かお)で、見ないで…ーーー)


「―――大事な話があるから。いつものレストランで待ってる」


「行きません…」

私は、うつ向いて言うのがやっとだった。


「うん、でも待ってるから。ゆりが来てくれるまで…。じゃあまた今夜」

努はそれだけ言うと、先に屋上から出て行った。


(――――大事な話…って…ーーーー)

私は暫く、その場に立ち尽くしていた。




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