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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第三章】遠距離/近距離の恋
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意地っ張り

実家近くで弟と別れてから、二人の間には沈黙が続いていた。


(馬鹿だな私は…――――)


もうすぐ東京(あちら)に帰らなくてはならないのに。

―――…泉といられるのはあとわずか…。そんな限られた時間なのに…。

つまらない意地で…こんな無駄な時間を過ごしているなんて。


(これじゃ、太一とケンカしたときと…変わらない…ーーー)


年下の彼氏とケンカしたときも、つまらない意地をはってなかなか謝ることが出来なかったことを思い出す。


(私、何も変われてない…ーーーー)


こんなはずじゃなかったのに、私は何回そんな後悔をすればいいんだろう。



「ゆりさん、ごめんなさい…」

悪いのは私なのに泉が謝ってきて、私は驚いて彼の顔を見つめる。


「さすがにデリカシーなさ過ぎでした…」

泉が申し訳なさそうに私を見つめる。


「な、何が?」


(あぁ、私はとことん馬鹿だ…ーーー泉も気付いてるのに知らないふりして…ーーー)

聞き返してしまった私は、心の中でうずくまって自分の馬鹿さに打ちのめされる。


「元カノの話です…」

泉は真顔で、言った。


「別に、気にして「気にして欲しくて、わざと言いました」」


(えっ?!)

気にしてないし、と言いかけた私の可愛いげのない言葉に被せるように、泉が真顔で言った。


「…嫉妬してくれるかな、とか…―――」

(あぁ…本当…ーーーー)


「すみませんでした」

(泉はズルいよ…ーーーー)


「…嫉妬、したよ…っ」

私は泉の方を向いて、泉に…本当の気持ちをぶつけてしまった。まるで泉の言葉に、つられるように…ーーー。


「…だけどそれ、言わすのズルい…」

私は目をそらして、照れ隠しにまた要らない一言を泉に放ってしまった。

(あぁ…ばかな私…ーーーー)


「ありがとうございます」

自己嫌悪に陥っている私の隣で、泉が言った。


「いや、褒めてないから…」

泉の会話は、相変わらずずれている。

(なんでお礼なんて…ーーー)


「ゆりさん、好きです」


「はぁ?」

(今度は告白?――――もう…。本当に泉は…ーーー)


「――――好きです、誰よりも」

(ズルいよ…ーーーー)


「来月は、僕の方から会いに行っても良いですか?」

泉の手が、私の頬にそっと触れて、私は真っ赤になりながら目を伏せる。


(良いに決まってるでしょ…―ーばか)

私は心の中で返事をする。

最後まで、意地っ張りな私に…ーーー彼は、そっと私の頭にキスをした。


まるで、私の心を見透かしたように…――――幸せそうに。




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