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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第三章】遠距離/近距離の恋
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謎の先輩(葉月目線)

「―――え?」

高校一年の夏、バスケ部の合宿の夜のことだ。


同じクラスで同じバスケ部の三輪彰太が出してきた話題を、俺は思わず繰り返す。

「なんで“吹成先輩が誰とも付き合わないのか”って?」


「うん、気にならね?」

布団を自分達で引きながら、一年は全員広間で雑魚寝。

他の一年は枕投げでもするテンションらしい。

そんな浮わついた雰囲気の中で彰太が俺の意見を聞こうとする。


「あー言われてみれば確かに…」

吹成先輩というのは、三年生の、バスケ部の部長。

吹成先輩と聞いて思い浮かぶのは、華麗なレイアップシュートとスリーポイントシュート。

でも俺が知ってる吹成先輩は、バスケをやってるとき限定で。

言われてみれば、彼女とか居そうなもんなのに聞いたことも見たこともない。


「あれだけのハイスペック、女子が放っておくわけねーし」


「お前は女子か」

彰太が俺の呟きにツッコミつつ、

「―――でも好きな人とかいるのかもな」

と言った。


「ああ、それなら納得だな」

彰太の仮説に、俺は頷く。だけど、それでも疑問は残る。


「でも、吹成先輩に言い寄られて、断る女子が居るとは思えねーな」


「だな。告れば一発でオッケーもらえるだろうに…」

俺と同じ見解だったらしく、解けない謎に彰太もスッキリしない表情だ。


「「謎だ」な…」

彰太と俺の声がシンクロして、夜は更けていった。



翌朝、朝練が始まる前の朝食の配膳中、吹成先輩の隣になり、俺は思いきって、ズバリ本人に正解を聞いてみることにした。


「吹成先輩って、好きな人いるんすか?」


「―――…突然何、葉月。」


(当然の反応だよな。後輩がいきなりこんなこと聞いて…。)

だけどそう言いながらも、微笑んで俺を見返してくる辺り、さすが“吹成先輩”だ。


「だってモテますよね!俺、先輩に彼女いるとか聞いたことないし。それって、告られても断ってるってことっすよね?」


「…葉月は告白されたら、付き合うんだ?」


「そりゃ可愛い子からだったら…」

先輩に聞かれて、俺は自分だったら…と想像しながら答えかけた俺は、ハッと我に返る。


「―――って、俺の話じゃなくて今は吹成先輩の話を…ーー」


「………」

微笑んで誤魔化す気なのか、先輩が何も答えないので、

俺はあることに気付いた。


「・・・先輩、もしかして男が好…「違うよ?」」

言う前に否定されたが、それはそれでホッとした。

(良かった、そっちじゃなくて…ーー)


だけど、ホッとしたのに俺はドキドキしながら、先輩を見ていた。

先輩が俺をじっと見つめてくるから、目が離せなくて…――――。


「好きな女性(ひと)はいたよ…ーーーでももう…気持ちは届かないだろうし、ね」

まるでもう諦めるしかないみたいな言い方で、先輩が俺に話す。


「…―――先輩…」


「だから君が羨ましいよ、葉月。」


「???」

(―――…えっ?俺?)

なぜ俺が羨ましいのか全くわからなかったが、配膳がおわってしまったのでそれ以上聞くこともできなかった。




―――――夏休みが終わり二学期が始まると、

吹成先輩は同じクラスの佐藤奈津美(さとうなつみ)先輩と付き合い始めたという噂が、一瞬にして拡散されていた。


佐藤奈津美先輩は、バスケ部のマネージャーだったから、

俺も知っている。

誰にでも愛想が良くバスケ部内のマドンナ的な奈津美先輩。


――――意外に近いところに吹成先輩の想い人がいたんだな、と驚いた。



「先輩、好きな人って奈津美(ナツミ)先輩だったんすね…」


「うん。“夏海(ナツミ)先輩”…――――」


二人はお似合いだったし、奈津美先輩は東京の大学に進学するのが決まっても、吹成先輩は動じる事もなくて…。


(ああ、強い絆で二人は結ばれているんだな…)

――――…そう思った。







だから、二人が別れるなんて…思わなかった。


それどころか、俺の姉ちゃんと付き合ってるなんて…―――。

(なんで?いつどうやって出会った?――――全く意味がわからねーー?!)


彼女との初めてのお泊まりデートから帰ってきたばかりで、

昨日は緊張しっぱなしだった俺は――――混乱したまま…不思議と眠りについた。


―――謎はまだ解けそうにない。

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