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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第三章】遠距離/近距離の恋
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疑心(吹成泉目線)

二週間ぶりにゆりさんに会えて、僕は幸せだった。


高校時代密かにずっと夢見てた「一緒に登校したい」という願いも、まさか叶えることが出来るなんて思ってもいなかった。



―――家に着くと、ゆりさんは今日会ったときのようにまた緊張していた。

(なんか初々しくて、かわいいな…ーーー)


ゆりさんに気付かれないようにクスッと笑って、僕はキッチンへ立つ。


「あ、私も」

「ゆりさんは、お客さんですから座ってて」

気を遣って手伝おうとしてくれたゆりさんに、僕はソファーで待つように促す。


(残業遅くまでとか、昨日も遅くまで飲んでたからきっと疲れてますよね?)

僕はソファーで緊張しながら座ってるゆりさんの後ろ姿に、

幸せな気持ちで料理をしていた。


「……ゆりさん?」

あまりに静かだと思ったのは、料理が出来上がってお皿に盛り付ける前の事だった。


さっきまで緊張しながら座っていたゆりさんの姿がなくて、

僕は焦ってソファーまで見に行く。


(寝てる…ーーー)

無防備な寝顔で、ゆりさんは体を斜めにして眠っていた。


(やっぱり疲れてたのかな…ーーー)


僕はあまりの可愛さに、どうしようもなく触れたくなった。

起こさないように、ゆりさんの肩まで伸びているサラサラの髪にそっと触れる。



(…――――え…ーーー)

ドクンと心臓が嫌な音をたてた。触れた髪の隙間から覗く首筋に、僕は目を見開く。


右側の首に掛かっていた髪をそっと退けると、そこに赤い痕があった。


(蚊…―――?)

信じられない思いで、僕は必死でそう思おうとした。


そう思い込もうとした。


――――でも、この赤い痕が…なんなのか…僕は知っている。

この柔らかく白い肌に、こうして残る痕を…ーー。


(…―――誰が…?)


ふと、今日会ったときにゆりさんが『終電を逃した』という話が一瞬頭をよぎる。


(同期と飲みに行くとは言っていたけど、そういえば女性だとは言ってなかった…ーーー)


どんどん思考はネガティブな方向へ向かってしまう。


なぜなら彼女は、――――僕がずっと好きだった女性(ひと)だから。

―――きっと一生、手に入らないと思っていた人だから。


疑いたくないのに、どうしようもなく不安ばかりが心を支配する。

僕は気持ちを落ち着けるためにゆりさんから離れ、とりあえず夕御飯の準備をしようとキッチンへと戻った。


(きっと何かの間違いだ…ーーーゆりさんが浮気なんて有り得ない…)


僕はゆりさんのことをよく分かっているつもりだ、だから信じればいいんだ。

そう言い聞かせながらお皿を準備するが、なぜか手が震え、カチャカチャと音をたてる。


ゆりさんの起きた気配がして、僕は声をかけた。


「ゆりさん、食べましょう?」



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