切ない気持ち
「昨日、は…ーーー」
(なんで急に…そんな話になったんだろう…ーーー)
夕ご飯を美味しく食べていたはずなのに、
目の前にいる泉の不安げな表情を見ると、なんだか言い出しにくかった。
「と、友達に泊めてもらったの」
(春田くんは友達だから、嘘ではないよね)
自分を弁護するように、私は心の中で思った。
「ゆりさん」
泉は箸を置いて、私をじっと見つめる。
「…なに?」
私が尋ねると、泉は席を立った。そして私の席まで回り込んで、
「今、抱きたい」
と、椅子からヒョイと私を抱き上げた。
(えっ、ちょっ……―――――)
それはあまりに咄嗟のことで、私は持っていたお箸を食卓に置くのがやっとだった。
そして、気づくと私は泉の寝室のベッドに降ろされた。
「い、いずっ…ん!どうしたの?」
首もとにキスをする泉に、抵抗しながら私は尋ねる。
すると泉が顔を上げた。
―――泉の瞳が、動揺した私を映している。
(どうしてそんなに…ーーー不安げな目をしているの?)
「ねぇ…ゆりさん…ーーー」
泉の口がゆっくりと動く。
「?」
「ゆりさんは僕のものですよね?」
「な、なに急に…ーーー」
突然大胆なことを言われて、私は恥ずかしくなって目をそらす。
でも泉は、真剣だった。真剣な声で、ポツリと弱音を吐いた。
「不安なんです。―――好き過ぎて…」
(ねぇ、泉…ーーーどうしてそんな事言うの?)
泣きそうな瞳が私をとらえる。私は無意識にそんな彼の頬に両手を添えた。
「…―――貴女は底抜けに優しい女性だから…」
ポツリと零れる言葉が、私の心にしみてくる。
(私は、泉のものだよ?…ーーーだからそんな表情しないで…ーーー)
泉の唇が、久しぶりに私の唇に降りてきて…ーー。
私たちは愛を伝えあった。
―――だけど…どれだけ私を抱いても…、泉の表情は晴れなかった。
(泉…ーーー?何か隠してる…ーーー?)




