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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第三章】遠距離/近距離の恋
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同僚との距離

「俺さ、実は本社勤務になったんだよね」

薄暗い照明の居酒屋に二人並んで座ると、春田くんが言った。



「え?そうなの?」

さっき陽子がいたときはそんな話してなかったから、私は純粋に驚いた。


「うん。来月から一緒のフロアー」


「そうなんだ、こっち帰ってくるんだね」


「そっ。だからよろしくな!!」


「うん」

(春田くんも同じ部署だとなると、陽子と二人、賑やかになるなぁ)

私は嬉しくなって笑顔で頷いた。


すると春田くんが目を細めて笑うと、

「ゆりに一番に言いたくて」

と言った。


「え?」

(私に?―――なんで私?)

頭の中が疑問符でいっぱいになり、首をかしげながら春田くんの顔を見る。


でも春田くんは私の顔を見ずに目の前のお酒に視線を落としながら、

「―――新城さんと別れるなんて…思わなかったけど」

と、突然話を変えた。


「…―――?」

あまりに脈絡のない話に、私は戸惑いながらお酒を見つめたままの春田くんを見た。

でも春田くんはそんな私を気にすることもなく、話を続ける。


「それより、もう年下と付き合うことになったって方が驚いた」


「…―――うん。」

春田くんが言った言葉に、私も素直に頷いた。

「私もね、自分で驚いてて」

(あんなに恋愛から逃げていたくせに、泉とはそうならなかった…ーーー)

泉のことを思い出すだけで、ふわっと気持ちが熱くなる。


「………」

(明日会える…嬉しいな…ーーー)


「新城さんと付き合うことになったのも、新城さんから半年ぐらい猛アタックされて―――、…だったろ?」


春田くんの声で我に返った私は、緩んでいた口許が恥ずかしくなって手でそっと隠す。


「…―――そう、だっけ?」

(春田くん、どうしてそんな話…ーーー今するの?)

私は春田くんから目をそらす。


―――努が付き合う前に、私を好きだと言ってくれたこと、私のことを大切にしてくれたこと…それを今思い出させる必要なんて、無いはずなのに。


「そうだよ」

春田くんが私の方を向いて、ハッキリと言った。


「なのに今回は別れてすぐ、違う男?」


「春田くん、なんか…怒ってる?」


「別に、怒ってねぇよ。ただ、納得いかねーだけで」


「?」

(納得…って何?)

雲行きが怪しくなったから、私は腕時計に視線を落とす。

「…―――あ、ごめん。私そろそろ行かないと終電が…」


立ち上がりかけた私の腕を、春田くんが掴んだ。

「行かせない」

春田くんが真顔で私を見つめる。一瞬ドキッとしてしまった。

(あ、そうか…ーーー)

「―――冗談やめてよ。本当にヤバイんだって時間…」

今、春田くんの冗談に付き合う時間は無かった。


私が苦笑いでそう言うと、春田くんが私の目をまっすぐ見つめたまま言った。


「冗談だと、思う?」


「…――――?」

(春田くん…―――嘘…でしょ?)


遠距離彼氏(そいつ)と別れるなら、離すよ。ーーーーどうする?」


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