とめる理由
『あ、先輩こんにちは』
吹成との高校時代なんて、挨拶くらいしか、
思い出せなかった。
――――なぜなら、彼は…ーーーー。
「それで?吹成は今何してるの?」
とりあえず、明日も仕事な私は家に吹成を泊めることにした。
会うのは高校の卒業式以来、四年ぶりだった。
「僕は今、大学生です、N大学に。」
(あぁ…地元の大学に通ってるのか…)
「今日、実は東京には、遠距離中の彼女に会いに来たんですよね」
悪びれもなく、微笑みながら吹成が言う。
「へぇ」
(――――このリア充がっ!その類いの話、傷心の私にすんなよ!)
…と思ったが、事情を知らないのだから、仕方ない。
私はぐっと堪えて、タバコに火をつける。
「でもケンカになりまして…彼女の部屋から追い出されちゃいまして」
「………」
(いや、なぜ照れる?今他にすべき事あるだろうに)
私は無言で、吹成を呆れた目でじっと見る。
「で、途方に暮れてふらっと入った映画館で、先輩に偶然お会いしたので助けていただこうかと」
(結論、こいつのマイペースさは健在だった。)
「…図々しいな」
私がタバコの煙をフッと吐いてそう言うと、
「仰る通りですね」
なにが嬉しいのか、目を細めて子犬のように頬を緩める。
「ところで先輩、」
突然私の煙草をパッと取り上げた彼は、それを目の前の灰皿へ押し付けた。
「―――煙草、似合ってませんよ?」
(本当、なんなのこいつは…ーーー!?)




