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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第二章】吹成泉の恋
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料理のコツ

家に帰る途中、先輩は会話もないまま黙って僕を家に入れた。


三日間何の意識もせず過ごしていたのが嘘のように、先輩はソワソワしていた。


「へ、変なことしようとしたら容赦なく叩き出すから」


先輩がやっと口を利いてくれたと思ったら、そんな可愛い台詞だったから、僕は笑ってしまった。


「はい」

笑って、素直にそう返事をした。

(先輩…可愛いなぁ…本当)



「では、夕御飯の支度しますね」

僕はそう言いながら、キッチンに向かう。


トントントンと野菜を刻んでいると、先輩がふらっと近付いてくる。

「私も何か…ーーー」


「先輩は座ってテレビでも見てて下さい」


今隣りに立たれるのは、色々と堪えがたいのでやんわりと拒否する。


「これは、恩返しなので」

(貴女が僕にくれた、かけがえない時間の…そのお礼にすぎないから)


「私が料理出来ないからってバカにしてるでしょ?」


僕の素直な気持ちをどうとらえたのか、リビングでテレビの電源を入れながら、先輩がなぜか卑屈になって言う。


(拗ねてる…ーーー可愛い…ーーー)

そんな先輩の背中を見ながら、僕はまた笑ってしまった。


(バカになんてするはずがないのに、僕は先輩を尊敬してるんだから…ーーーー)



「料理は、慣れだと思いますよ?先輩、自炊してなかったでしょう?」

笑いながら僕がそう言うと、先輩の背中が軽く跳ねた。

(どうしてバレたんだろう…とか思ってそう…)

黙ってテレビを見ていた先輩に、料理の手を休めず僕は一応、理由を話す。

「調味料とかも揃ってないですし、コンロも綺麗なので」


先輩は何も言わなかった。―――聞こえていないのかもしれない。それか、耳が痛いのか…ーーー。


「料理は、本を見て分量と手順さえ間違えなければ誰にでも出来ますよ?」

僕がフォローしようとそう言うと、


「それが面倒くさいのよね」

先輩の声が返ってきた。

―――あ、やっぱり聞こえていたんだと思った。


「僕も、手順さえ間違えなければ…」

ボソッと独り言を呟くと、先輩がソファーから振り返ってこちらを向いた。


「なんか言った?」


「いえ、何も…ーーー」

そう誤魔化して、無言で料理の手を動かす。


(僕も…手順さえ間違わなければ…ーーーー)


どうして太一に惹かれていく貴女を好きになったんだろう…。

僕が太一より先に好きになっていたら…、僕が彼氏だったかもしれないのに…ーーー。


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