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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第二章】吹成泉の恋
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休日デート

翌朝の土曜日は、天気も良くて過ごしやすかった。


スカイツリーの天望デッキから見える景色に目を輝かせている夏海先輩は、とても楽しんでいるように見えた。


「―…何よ?」

隣で夏海先輩を見つめていると、僕の視線に気付いた先輩は、はしゃいでしまったのを見られたのが恥ずかしかったのか、わざと怒ったような口調になっている。


「いえ、何も?」

そんな先輩が可愛らしくて、僕は微笑んで答える。



「他にも色々行ってみますか?」

僕がそう言うと、先輩が何やら哀れみを含んだ瞳で僕のことを見つめてくる。


(…―――もしかして嫌、だったかな?)


先輩が僕の隣で休日を過ごしているなんて、嬉しすぎて調子に乗りすぎたのかと不安になる。



「先輩?」

じっと何か考えて込んだまま黙っている先輩に、僕は声をかける。


すると、先輩はニコッと微笑んで言った。

「うん、行こ」

僕はその瞬間、先輩の笑顔に見惚れていた。




「東京見物もなかなか面白かったですね」

あれこれ歩きながら、結局夕方まで、二人で観光を楽しんだ。

(こんなに幸せで…良いのだろうか?)

思わず不安になるぐらい、先輩との時間は楽しくて…あっという間だった。


「良かった!」

先輩がいつになく、笑顔のまま真っ直ぐに僕を見て言った。

先輩も楽しそうだったから、てっきり自分と同じ気持ちだと思っていた。


でも…違った。

―――彼女は無邪気に笑顔を向けたままこう言った。


「吹成の気分転換になったなら」


「―――…」

僕の表情から、笑みが消える。

(先輩は…最初から…ーー僕の失恋を気にして…?)


「や、ごめん。何でもない…」

言うつもりはなかったのに、としゅんとしながら先輩が謝る。


(あぁ、やっぱり…ーーーー僕は彼女に気を遣わせるばかりの“後輩”に過ぎないんだな…。)

――――…僕はすっかり落ち込んでいた。


「あ、吹成!アイスクリーム好き?」

先輩が話題を変えようとしたのか、突然そんな質問をして来た。


「え、あ、はい」

突拍子もない質問に、面食らった僕はぎこちなく頷いた。


「この先に美味しいところあるんだ、連れてってあげる」

先輩が優しく微笑んでそう言うので、僕は不覚にも喜んでしまった。


「はい。ありがとうございます」

(でもこうして、僕と向き合おうとしてくれるから…ーーー僕は貴女のことを諦めきれないでいるんです…先輩。)




時計を見ると、夕方の五時を過ぎたところだった。


「じゃあ私、そろそろ帰るね」

先輩は自宅へ帰ろうと近くの駅へと向かって歩きながら言う。


「分かりました、帰りましょう」

(だからまだ、一緒に居させてください…)


「え?」

僕の言葉に、先輩は思わず聞き返したようだ。


「帰りましょう?夏海先輩の家に」


僕はあえて爽やかな笑顔で言った。すると先輩はため息をついてから言った。


「―――…まさか、今日も泊まる気?」


「はい、ダメですか?―――夕御飯、作りますから」


「一体いつになったら帰るわけ?」

嫌そうに言うのは、先輩のいつものノリだと分かっていた。

だけど僕にはつらかった。このままでも幸せだと…思っていたはずなのにー―――。

いつの間にか独占欲が…抑えきれないところにまで達していた。


だから僕はその気持ちを、先輩に打ち明けることにした。


「先輩が、僕のこと好きになったら帰ります」


(例え、貴女が…僕のことを好きでなくても…ーーー僕は貴女の事が好きです。だから…もう少しだけ…ーーー居させてください。)

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