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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第二章】吹成泉の恋
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週末に家めし

―――今日で三日目。


先輩は僕をリビングのソファーで寝かせていることに関して、全く気にしていないようだった。


―――…相変わらず“男”としては見てもらえていないが、

“後輩”としては信用してくれている。


僕はそれでも…―――、こうして一緒に暮らせているだけでも幸せだった。


(貴女が…一人で泣くことさえなければ…あんなふうにーーーー)


それに、朝は僕の作ったご飯を食べて、お昼には僕の作ったお弁当を持っていってくれる。

そして会社帰りは、真っ直ぐに…ーー僕が夕御飯を作り終える頃に帰ってきてくれる先輩。

そんな、同じ時間を過ごせているだけで毎日こんなにも心癒されているから。



今日も、冷製パスタが出来上がったと同時にガチャリと扉が開いた。


「お帰りなさい、先輩」


嬉しくてつい玄関まで出迎えると、一瞬「ただいま」と言いかけた先輩は、ハッとひと息ついてから気まずそうに僕を見る。


「吹成、いい加減に地元帰りなさいよ、いつまでここに居るつもりなの?」

先輩がそう言いながら靴を脱いで、部屋に入る。


「大丈夫ですよ、今、大学は夏休みですから」

僕は部屋に入った途端お腹を押さえた先輩が可愛らしくて、クスクス笑いながら答える。


「今日は茄子とトマトと生ハムの冷製パスタです。」


食卓テーブルの上に綺麗に盛り付けられたパスタを食べたそうに見ている先輩は、何かと葛藤していた。


「食べましょう?…―――どうぞ?」


椅子を引いて、ここにどうぞと微笑んで言うと、彼女は渋々着席した。



「美味しい…」

一口食べた先輩が思わずといった感じでそう言った。



「お口にあって、良かったです」

先輩の好きな食べ物も嫌いな食べ物も分からなかった僕は、ホッとして、つい口許が緩んだ。


すると、先輩がパスタではなく僕を見たまま手を止める。

「先輩?」


僕が先輩の異変に気付き、声をかけると、

「あ…」

先輩が我に返ったように慌てて言った。

「な、何でもない」


そして手元に視線を落とし何やら必死にフォークを動かしていたが、うまくパスタが巻けていない。


(何を動揺しているのか分からないけど…ーーー可愛い…)

僕がそんな先輩を微笑ましく見ていると、


「―――吹成は、太一と連絡とってたりするの?」


突然先輩が元彼(あいつ)の名前を出した。

(え…―――?)

僕は驚いて、先輩の顔を見てしまう。


(どうして…ーーー太一のことを聞くの?)



「太一とは、同じ大学ですが…―――学部も違いますし今は全く。」

僕は笑顔で答えるつもりだったが、あまりのショックに寂しさを上手く隠しきれなかった。


(先輩は知らない…ーーー先輩が卒業した後、僕達がもう話すらしていなかったことを…ーーー)


「あ、そう…」

先輩が気まずそうにそう言って、会話は終了した。


(先輩はまだ、太一のことを…ーー?いや、そんなはずない…ーーー)



「それより先輩、明日は何します?」

自分の中の不安を打ち消すように、僕は先輩に尋ねる。


「え、明日?」


「せっかくの休日ですし。どこか観光でもしませんか?」


(今、貴女の傍に居るのは僕です…ーーー夏海先輩。)


この気持ちは、誰にも…負けない。

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