確信犯
「結構飲みましたね、明日大丈夫なんですか?」
居酒屋を出て、明日も会社なのに大丈夫なのか心配になった僕は先輩に尋ねた。
「私、お酒強いから」
先輩はそうさらっと答える。
(―――本当に、格好いいな…先輩は。)
あれだけ飲んだのに、全くふらついてもいない彼女に、僕は思わず苦笑してしまう。
「そうなんですね、羨ましいです」
(その強さがーーーー…)
帰り道、僕はずっと聞いてみたかったことを先輩に聞いてみた。
「…先輩は、遠距離とかどう思いますか?」
すると、慰めるような表情で僕を上目遣いで見つめる先輩。
(何か、勘違いしてる気がするな…ーーー)
「どうって…別に好きなら関係ないんじゃない?距離とか」
「ですよね…」
(ーーー先輩なら…きっとそう言うと思ってた)
思い通りの答えに、僕は嬉しくてつい笑ってしまう。
「ところで吹成、もうすぐ終電なくなるけど大丈夫?地元の方、電車の本数少ないし、そろそろ電車乗らないと」
先輩は自宅へ向かう方面の電車に乗りながら、僕に反対方面行きの電車を指差す。
「ですね」
そう言いながら僕は、ちゃっかり先輩と同じ車両に乗り込んだ。
「吹成?」
こっちは地元と反対方面なんだけど…とでも言いたげに先輩が僕を見上げる。
僕はそんな先輩の顔を待ち構えていた。
(…僕は、まだ帰れないです、先輩。ーーーー貴女が僕に心を許してくれるまで…)
「地元行きの電車、もう無いので。もう一泊させて貰っても良いですか?」
僕が悪戯に微笑んで言うと、先輩は呆気に取られていた。




