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彼は私の×××   作者: 夢呂
【第二章】吹成泉の恋
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映画館で

暗くなり映画が始まると、今流行りの純愛映画が始まった。


隣に座った僕は、彼女に気付かれないように彼女を盗み見た。


黒のパンツスーツ姿の彼女は、随分大人びて見えたが、雰囲気はあの頃と何も変わっていなかった。


(夏海先輩、こういう映画が好きなんだな…ーーー)


内容が純愛ものだったからか、

ふと彼女が僕と仲の良かった高岸太一と付き始めた時のことを思い出す。


――――夏海先輩は、高嶺の花だった。

誰とも付き合わないことで有名な、学校でも目を惹く美人だった。

太一はそんな彼女を、かなり頑張って口説いていた。

そして最終的に、彼女は付き合うことにオッケーを出したのだった。

太一は死ぬほど喜んでいたが、僕はすぐに気付いた。

―――夏海先輩が、太一のことを全く好きではなかったこと。


だから僕は、そんな夏海先輩が付き合い初めてから太一に惹かれていく様子を誰より近くで見ていた。


そんな夏海先輩に、いつしか惹かれていたことも付かずに見つめ続けていた…ーーー先輩が卒業するまで。



グシッと鼻をすする音が聞こえた気がして、僕は隣をチラッと盗み見た。


(え…ーーー泣いてる?!)


先輩は、感動のシーンでもないのに静かに涙を流していた。


その涙が、泣き顔がーーーあの時と重なって見えて、僕はつい声をかけてしまった。


「あのこれ、使ってください」


(どうか、泣かないで…ーーーー)


高校卒業間近に、先輩が一人でこっそり泣いていたのを僕は知っている。

―――その時と同じ表情だったから、すぐに分かった。



僕が声をかけると驚いた先輩は慌てて涙を素手で拭いこちらを向いた。


そして、僕の顔を見て、さらに驚いた顔をして呟いた。


吹成(ふなり)…―――?」



そう呼ばれて、僕の胸は初めて熱くなった―――…。

(覚えててくれたんですね…僕のこと――――…)






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